毎年、熾烈な優勝争いが繰り広げられ、現在世界で最も盛り上がりを見せるイングランド・プレミアリーグ。近年、その中でも無類の強さを誇るのが「マンチェスターシティFC」です。
今日は彼らの強さの秘訣を探るべく、マンチェスターシティFCの戦術について深堀りしていきたいと思います。
マンチェスター・シティFCのチームプロフィール

表記 | Manchester City Football Club |
愛称 | The Cityzens(シチズン) |
創設年 | 1880年 |
本拠地 | マンチェスター |
ホームスタジアム | エティハド・スタジアム |
所属リーグ | イングランド・プレミアリーグ1部 |
クラブカラー | スカイブルー |
公式サイト | Manchester City FC – Official Website of Man City F.C. |
監督

国籍 | スペイン |
生年月日 | 1971年1月18日 |
身長/体重 | 180cm/76kg |
愛称 | ペップ |
シティ就任期間 | 2016年2月~ |
マンチェスター・シティFCを指揮する監督は、ジョゼップ・グアルディオラです。「ペップ」の愛称で知られ、世界的にも有名な監督です。新たな戦術を次々と生み出し、まさに現代サッカーのトレンドを先行しているとも言える人物ですね。
そんな彼は元々、スペインの強豪FCバルセロナで活躍したサッカー選手です。現役を引退した後に、FCバルセロナの下部組織の監督に就任し、就任1年でチームを4部から3部に昇格させる結果を残します。その活躍が認められ、2008年にはFCバルセロナのトップチームの監督に就任。リーグ優勝やUEFAチャンピオンズリーグ優勝、コパ・デル・レイ優勝という3冠を達成するなど、2シーズン連続で無冠であったクラブに改革をもたらす結果を残しました。
その後もFCバルセロナで多くのタイトルを獲得し、2012年に監督を退任します。
2013年には、バイエルンミュンヘンの監督に就任。チームが変わっても、監督としての腕は確かなもので、リーグ優勝やその他カップ戦のタイトルを獲得します。結局彼が在籍した3年間は全シーズン、リーグ優勝という結果となっています。
そして2016年にマンチェスター・シティFCの監督に就任。彼が取り入れた難解な戦術の理解に選手たちが苦しみ、1年目こそ結果は残せなかったものの、2年目にはリーグ優勝。その後もリーグ優勝やUEFAチャンピオンズリーグ優勝などのタイトルを獲得し続け、その勢いは止まることを知りません。今後も彼がどんな戦術を組み立てていくのか注目していきたいですね。
在籍メンバー紹介(2023-2024)
GK
選手名 | 背番号 | 国籍 | 生年月日 |
ザック・ステフェン | 13 | アメリカ | 1995年4月2日 |
ステファン・オルテガ | 18 | ドイツ | 1992年11月6日 |
エデルソン | 31 | ブラジル | 1993年8月17日 |
スコット・カーソン | 33 | イングランド | 1985年9月3日 |
DF
選手名 | 背番号 | 国籍 | 生年月日 |
カイル・ウォーカー (CP) | 2 | イングランド | 1990年5月28日 |
ルベン・ディアス | 3 | ポルトガル | 1997年5月14日 |
ジョン・ストーンズ | 5 | イングランド | 1994年5月28日 |
ネイサン・アケー | 6 | オランダ | 1995年2月18日 |
セルヒオ・ゴメス | 21 | スペイン | 2000年4日 |
ヨシュコ・グヴァルディオル | 24 | クロアチア | 2002年1月23日 |
マヌエル・アカンジ | 25 | スイス | 1995年7月19日 |
リコ・ルイス | 82 | イングランド | 2004年11月21日 |
MF
選手名 | 背番号 | 国籍 | 生年月日 |
カルヴィン・フィリップス | 4 | イングランド | 1995年12月2日 |
マテオ・コバチッチ | 8 | クロアチア | 1994年5月6日 |
ジャック・グリーリッシュ | 10 | イングランド | 1995年9月10日 |
ロドリ | 16 | スペイン | 1996年6月23日 |
ケビン・デ・ブライネ | 17 | ベルギー | 1991年6月28日 |
ベルナルド・シウバ | 20 | ポルトガル | 1994年8月10日 |
マテウス・ヌネス | 27 | ポルトガル | 1998年8月27日 |
フィル・フォーデン | 47 | イングランド | 2000年5月28日 |
オスカー・ボブ | 52 | ノルウェー | 2003年7月12日 |
FW
選手名 | 背番号 | 国籍 | 生年月日 |
アーリング・ハーランド | 9 | ノルウェー | 2000年7月21日 |
ジェレミー・ドク | 11 | ベルギー | 2002年5月27日 |
フリアン・アルバレス | 19 | アルゼンチン | 2000年1月31日 |
マンチェスター・シティの基本フォーメーション
続いて、マンチェスター・シティの基本フォーメーションを紹介していきます。

基本的には4-3-3のフォーメーションを組んでおり、選手の配置もこのような感じになっています。ここにフリアン・アルバレスが入ってきたり、ドクが入ってきたりといった配置が多いですね。
マンチェスター・シティの戦術

では、ここから具体的にマンチェスター・シティがどういった戦術で戦っているのか?なぜマンチェスター・シティは強いのか?彼らの強さの秘訣を探っていきます。
攻守においてシステムを変更
先ほど基本的なフォーメーションは4-3-3だとお伝えしましたが、マンチェスター・シティの場合、攻守においてこのフォーメーションが大きく変わります。むしろ4-3-3のまま攻撃をすることも、守備をすることもあまり見られないということです。
それはどういうことなのか?
まず、攻撃の場合は両サイドバックが位置を上げて中に入ることでアンカーを務めるロドリと並び、2-3の形を形成したり、インサイドハーフであるデブライネやB・シウバがサイドに開いたり、アンカーの位置まで落ちてビルドアップに参加したりなど、基本であった4-3-3の形が崩れることが多いです。
守備の場合も、1人のインサイドハーフが一つポジションを上げて4-4-2の形を形成したり、時にはロドリが下りてきて、最終ラインを5枚にして守ったりと攻守において基本となっているシステムを変更しながら戦うことで、その状況において最適な攻撃又は守備が出来るようになっています。
偽SB
グアルディオラ監督がシティに取り入れた戦術として、有名なものがこの「偽SB」という戦術になります。先ほどちらっと書きましたが、両サイドバックが少し位置を高く取り、アンカーのロドリに近い位置にポジションを取ります。その分、CBは幅を取り最終ラインとアンカーのラインで「2-3」となるような配置となります。
両サイドバックが、本来サイドバックがいる位置からアンカー的ポジションに移動することにより、相手のウィング又はサイドハーフがつられる可能性があります。そのように相手が中を絞ってくるのであれば、CBから直接フォーデンやグリーリッシュがいるウィングまで一気にパスを届けることが出来ます。
さらに、もう一つこの戦術の狙いとして考えられるのは、より中央のスペースを人数をかけて支配することで、そこから攻撃を展開していきたいという狙いです。中央からビルドアップ又は攻撃を組み立てることで、様々な攻撃パターンに繋げられます。中央からの攻撃であれば、そのままスルーパスでFWが抜け出すことも、サイド攻撃に繋げることも、ミドルシュートを狙うことも何でもできます。何より、一番ゴールに近い中央から攻撃を受けるのはディフェンダーにとっては脅威となります。
偽9番
「偽SB」という戦術に続き、「偽9番」という戦術もあります。本来、9番というのはチームのストライカー的存在を担う背番号です。この9番が担うべき役割をおとりとして活かすのがこの戦術になります。チームに絶対的ストライカーがいない場合に、大いに生きる戦術と言ってもいいでしょう。
※シティにハーランドといったストライカーが加入した為、最近はそこまで見られなくなりました。
では、具体的に説明していきます。シティの基本フォーメーションは4-3-3。前線の中央に位置する選手が、この戦術で言う「偽9番」です。この「偽9番」は、ハーランドのような絶対的ストライカーではなく、今のシティで言うならフォーデンやアルバレス、デブライネやグリーリッシュが務めるのが妥当でしょう。
要は、この前線の中央の位置に「偽9番」と言われる選手を配置しておくことで相手を引き付けることができたり、そのポジションを自由に入れ替わって相手のマークを外したり、又は2列目からデブライネやB・シウバが飛び出してきたりなど、表向きでは9番として存在するけど、実際はそのポジションに本来求められる役割とは少し異なるプレーをする選手のことを「偽9番」と言います。
ハーランドが移籍してくる前は、マフレズという選手がこの「偽9番」の役割を務めていることがありました。サイドにいるスターリングやジェズスと自由にポジションを動き回ることで、相手の攻撃の的を絞らせない効果があったと思います。
ボックス内(ペナルティ内)に人数をかける
攻撃の際に、一番得点を取りやすいボックス内に人数をかけたいというのはどこのチームでも一緒だと思います。ですが、シティの場合はそのボックス内にかける人数を最低でも4人配置しており、どんな攻撃でもできて、得点能力も高いのが特徴です。多い時には5人、6人といる時もあります。ですので、厚みのある攻撃を仕掛けることが出来ますし、単純にサイド攻撃に合わせにいく選手も多くなります。
シティ相手となると、引いて守るチームや最終ラインを5枚にすることで守備を固めてくるチームも多いです。ですが、これまでどんな守備であってもシティの攻撃は得点を奪ってきました。この得点を奪いやすいエリアに他チーム以上に人数をかけるというのが、シティの攻撃力の秘訣なのかもしれません。
チーム全体としての攻撃戦術

いろんな戦術があることを紹介してきましたが、シティのチーム全体としての基本的な攻撃戦術としては、中盤を起点に攻撃を展開することです。1本のロングパスやスルーパスでチャンスを演出することももちろんありますが、一番の狙いは中盤を上手く支配しながら攻撃を組み立てることだと思います。先ほどお伝えしたどの戦術もこの中盤を制するということで、より活きてくる戦術です。
では、ポジション別にどんな攻撃戦術をしているのか見ていきましょう。
ポジション別の攻撃戦術
ディフェンダー(ゴールキーパー、最終ライン)
まず、CBはゴールキーパーがボールを保持中は横に一人が並ぶ。もう一人はアンカーと並んでパスコースを作る。そうすることでビルドアップに繋げやすいといった効果が期待できます。自陣ゴールに近い比較的低めの位置でボールを保持中は、ゴールキーパーもビルドアップに参加することで数的有利を作るようにしています。
また、上でもお伝えした「偽SB」を使う時は、両サイドバックがアンカーの位置までポジションを上げるので、その分幅を広く取り、スペースのケアを行います。
次に、SBは「偽SB」の戦術通り、アンカーのロドリに近づく位置までポジションを上げます。その位置でビルドアップに参加してもいいですし、ウィングやフォワードにボールが渡ったなら、スペースのケアやサポートに向かう、又はオーバーラップするなど様々な攻撃への参加方法があります。
ミッドフィルダー(アンカー、インサイドハーフ)
シティの攻撃戦術において、最も重要な役割を果たすのがこのミッドフィルダーになります。チーム全体の攻撃戦術の部分でもお伝えしましたが、シティの戦術や特性はこの中盤を支配しながら攻撃を組み立てることで生きてくると思います。
アンカーは、ビルドアップの際は攻撃の起点となるポジションです。最終ラインには必ず顔を出し、インサイドハーフのデブライネやB・シウバに繋げたり、ウィングまで繋げることが出来ればそれだけでチャンスが生まれます。「偽SB」の戦術がある(両サイドバックのフォローがある)ので、いけると思った時にはインサイドハーフの位置までポジションをあげる時もあります。
インサイドハーフの2人は、基本自由に動き回っているイメージです。アンカーの位置まで下りてくることもありますし、中央に相手のマークを引き付けたウィングの代わりにサイドに張ることもあります。また、2列目から裏へ飛び出して得点を奪うこともあります。この型にとらわれないインサイドハーフがシティの特徴ですね。
フォワード(センターフォワード、両ウィング)
最後にフォワードの戦術について解説します。CFのハーランドが加入してからは、彼を最大限に活かす戦術が中心となりました。基本的にはビルドアップにはあまり参加せずに、インサイドハーフやウィングからのラストパス又はクロスボールを確実に仕留めるといった役割を果たしています。また、ディフェンダーやキーパーがボールを保持中にも何度も裏へのスペースを狙い、得点に繋がる動きを見せています。
ウィングは、コートいっぱいに幅を取ってサイドで1対1を仕掛けたり、幅を取ることにより空いたスペース(CBとSBの間)に走り込んだり、時には中央に絞ってボールを受ける、又はおとりになるといった動きをしています。
マンチェスター・シティFCの過去の成績

マンチェスター・シティがどれぐらい強いかは皆さんご存じの通りだと思いますが、実際どんな成績を残してきたのでしょうか?ここでは、シティの過去の成績について振り返ります。※2010年から昨シーズンまでの成績になります。
シーズン | プレミアリーグ | FAカップ | チャンピオンズリーグ |
2010-11 | 3位 | 優勝 | 未出場 |
2011-12 | 1位 | 3回戦敗退 | グループステージ敗退 |
2012-13 | 2位 | 準優勝 | グループステージ敗退 |
2013-14 | 1位 | 準々決勝敗退 | ベスト16 |
2014-15 | 2位 | 4回戦敗退 | ベスト16 |
2015-16 | 4位 | 5回戦敗退 | ベスト4 |
2016-17 | 3位 | 準優勝敗退 | ベスト16 |
2017-18 | 1位 | 5回戦敗退 | ベスト8 |
2018-19 | 1位 | 優勝 | ベスト8 |
2019-20 | 2位 | 準決勝敗退 | ベスト8 |
2020-21 | 1位 | 準決勝敗退 | 準優勝 |
2021-22 | 1位 | 準決勝敗退 | ベスト4 |
2022-23 | 1位 | 優勝 | 優勝 |
マンチェスターシティ注目選手
ここまでシティの戦術について詳しく解説してきましたが、最後にシティの注目選手を紹介していきたいと思います。
フィル・フォーデン選手

国籍 | イングランド |
生年月日 | 2000年5月28日 |
身長/体重 | 171cm/70kg |
ポジション | MF、WG |
フォワードのハーランド選手が注目されがちですが、シティのウィングに位置するフォーデン選手も注目したい選手の1人です。足元の技術に加え、左足の正確なキックが特徴的な選手です。2022-23シーズンのプレミアリーグでは32試合に出場し、11ゴール5アシストとチームにとって貴重な働きを見せています。シティの攻撃の際には、ぜひ注目してほしい選手ですね。
ロドリ

国籍 | スペイン |
生年月日 | 1996年6月22日 |
身長/体重 | 190cm/78kg |
ポジション | MF、DMF |
シティの中盤が活きるのは、彼のおかげと言っても過言ではないです。インサイドハーフのデブライネ選手やB・シウバ選手が目立つことが多いですが、彼がアンカーにいることで攻守に渡りチームに安定感が生まれています。足元の技術にも優れており、ビルドアップの際にはその技術を発揮して攻撃の土台となります。また、190cmと体格も大きく、守備やボールキープもできる非常に万能型な選手です。
カイル・ウォーカー選手

国籍 | イングランド |
生年月日 | 1990年5月28日 |
身長/体重 | 183cm/83kg |
ポジション | DF |
最後は、シティのキャプテンであるカイルウォーカー選手です。2017年から長年シティを支えてきたベテラン選手であり、ピッチ上でも存在感を発揮しています。世界トップレベルのスピードとパワーを持つディフェンダーであり、数々のドリブラー達から「今までで一番手強かった」と評価されています。シティのキャプテンとして、今後どんな活躍を見せてくれるのか楽しみですね。
今日は3人の選手を取り上げて紹介しましたが、正直、3人では絞り切れないぐらい素晴らしい選手たちがシティには在籍しています。今後彼らがどのような成績やタイトルを残してくれるのか注目していきたいところです。
まとめ
さて、今日はプレミアリーグの強豪マンチェスターシティの戦術について解説してきました。彼らがどんなサッカーを展開し、そして彼らがなぜここまで強いのか?その秘訣について少しでもお分かりいただけたでしょうか?
革新的なアイデアで次々と現代サッカーのトレンドとも言える新戦術を生み出し、シティに数々のタイトルをもたらせたグアルディオラ監督と世界トップレベルの選手たちが融合した、まさに最強のチームですね。今後彼らがどれだけの成績を残し、どんなサッカーを私たちに見せてくれるのか。片時も目が離せませんね。
では、また。