ドイツ・ブンデスリーガで大波乱が起きている。それはバイヤーレバークーゼンの驚異的な快進撃が原因だ。なんとここまで公式戦無敗でリーグ首位、カップ戦、ELと3冠に最も近いポジションにいるからである。レバークーゼンは「王の玉座」に座ることができるのか。そして長く続いた「バイエルン1強」の時代は終わりを告げるのか。
今日はそんな快進撃を続けるレバークーゼンの強さの秘訣に迫る。
現在の状況とここまでの流れ
2024/3/10時点でのブンデスリーガ順位表
※上位5チームのみを抜き出しています。
順位 | チーム名 | 勝ち点 | 試合数 | 勝 | 分 | 敗 | 得点 | 失点 | 得失点差 |
1 | バイヤー・レバークーゼン | 67 | 25 | 21 | 4 | 0 | 63 | 16 | 47 |
2 | バイエルンミュンヘン | 57 | 25 | 18 | 3 | 4 | 73 | 29 | 44 |
3 | シュツットガルト | 53 | 25 | 17 | 2 | 6 | 57 | 31 | 26 |
4 | ボルシア・ドルトムント | 47 | 25 | 13 | 8 | 4 | 50 | 31 | 19 |
5 | ライプツィヒ | 46 | 25 | 14 | 4 | 7 | 55 | 31 | 24 |
ブンデスリーガのレギュレーションは全18チームのホーム&アウェー総当たりの全34節である。つまり現時点で残り試合数は9試合、シーズンの約70%を消化していることとなる。
ちなみに最終節は5月18日に行われる。
結果、最終節まで圧倒的な強さで勝利を積み重ね、23-24シーズンのブンデスリーガ優勝に輝きました。
2024年3月12日時点でのドイツカップ結果
日時 | 種別 | ホーム | スコア | アウェイ |
1/30 28:45 | 準々決勝 | ザンクトパウリ | 2-2 (3 PK 4) | デュッセルドルフ |
1/31 28:45 | 準々決勝 | ヘルタ | 1-3 | カイザースラウテルン |
2/6 28:45 | 準々決勝 | レバークーゼン | 3-2 | シュツットガルト |
3/12 28:30 | 準々決勝 | ザールブリュッケン | 2-1 | ボルシアMG |
現時点でレバークーゼンはベスト4進出を決めており、決勝進出をかけてデュッセルドルフとの対戦が決まっている。
2024年3月12日時点でのEL結果
・グループH
順位 | チーム名 | 勝ち点 | 試合数 | 勝 | 分 | 敗 | 得点 | 失点 | 得失点差 |
1 | レバークーゼン | 18 | 6 | 6 | 0 | 0 | 19 | 3 | 16 |
2 | カラバグFK | 10 | 6 | 3 | 1 | 2 | 7 | 9 | -2 |
3 | モルデFK | 7 | 6 | 2 | 1 | 3 | 12 | 12 | 0 |
4 | BKヘッケン | 0 | 6 | 0 | 0 | 6 | 3 | 17 | -14 |
ELの方は現在ラウンド16第1戦を消化し第2戦が3月14日に行われる。1戦目はアウェーで2−2引き分けという結果で、2戦目をホームで迎えることは大きなアドバンテージになるだろう。
レバークーゼンのクラブプロフィール
正式名称 | TSV Bayer 04 Leverkusen |
設立 | 1904年7月1日 |
本拠地 | ノルトライン=ヴェストファーレン州 レバークーゼン |
スタジアム | バイアレーナ(収容人数:30,210人) |
愛称 | ヴェルクスエルフ(工場のイレブン)、バイヤー・ヌルフィア、レーヴェン(ライオン) |
ユニフォーム | 赤と黒の縦縞 |
監督 | シャビ・アロンソ(2023年10月14日就任) |
ブンデスリーガに所属。バイエルをスポンサーに持ち、資金提供を受けて補強を図ってきた。歴史も長く古豪チームではあるが、リーグタイトルを手にしたことはない。
2002年にUEFAチャンピオンズリーグ、ブンデスリーガ、ドイツカップをあと一歩のところで逃し、全て準優勝に終わるという「準三冠」(シルバーコレクター) を達成したこともある。それ以来、他サポーターからネバークーゼンと揶揄されることもある。
レバークーゼンの過去戦績とブンデスリーガ過去順位
それでは、今季のレバークーゼンがどれだけ強くなったのか、過去の戦績と比べて見てみよう。
ブンデスリーガ 上位5チームとレバークーゼンの順位(2022-23シーズンから過去10年分)
シーズン | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | レバークーゼン |
2013-14 | バイエルンミュンヘン | ボルシアドルトムント | シャルケ04 | レバークーゼン | ヴォルフスブルク | 4位 |
2014-15 | バイエルンミュンヘン | ヴォルフスブルク | ボルシアメンヒェングラートバッハ | レバークーゼン | アウクスブルク | 4位 |
2015-16 | バイエルンミュンヘン | ボルシアドルトムント | レバークーゼン | ボルシアメンヒェングラートバッハ | シャルケ04 | 3位 |
2016-17 | バイエルンミュンヘン | ライプツィヒ | ボルシアドルトムント | ホッフェンハイム | ケルン | 12位 |
2017-18 | バイエルンミュンヘン | シャルケ04 | ホッフェンハイム | ボルシアドルトムント | レバークーゼン | 5位 |
2018-19 | バイエルンミュンヘン | ボルシアドルトムント | ライプツィヒ | レバークーゼン | ボルシアメンヒェングラートバッハ | 4位 |
2019-20 | バイエルンミュンヘン | ボルシアドルトムント | ライプツィヒ | ボルシアメンヒェングラートバッハ | レバークーゼン | 5位 |
2020-21 | バイエルンミュンヘン | ライプツィヒ | ボルシアドルトムント | ヴォルフスブルク | アイントラハト・フランクフルト | 6位 |
2021-22 | バイエルンミュンヘン | ボルシアドルトムント | レバークーゼン | ライプツィヒ | ウニオン・ベルリン | 3位 |
2022-23 | バイエルンミュンヘン | ボルシアドルトムント | ライプツィヒ | ウニオン・ベルリン | フライブルク | 6位 |
ドイツ国内において、2012-13シーズンからバイエルン1強ということがよくわかる表となっている。そしてレバークーゼンにおいては直近10年間で5位以内が7回、6位が2回となっており国内においては強豪クラブという位置付けであろう。これまでも強いチームではあったが、タイトルには縁遠いといった印象を受ける。 やはりバイエルンミュンヘンというビッグクラブが存在し、レバークーゼンのみならずブンデスリーガ全てのチームがこのビッグクラブに勝てないといった状況であった。
基本フォーメーションとシステム
基本フォーメーションは5−4−1or3−4−2−1。
ディフェンスラインに関しては3バックが基本ベース。中盤の4枚がディフェンスからビルドアップまでポジションチェンジを繰り返しながら関わり続ける。また前線から連動したハイプレスをかけていくことで強固な守備ブロックを構築している。それが結果としてリーグ最小失点につながっていることから、安定感・対応力ともにリーグ屈指の守備力であると考える。
レバークーゼンの戦術は?
ベースは自分たちがボールを保持し続けるスタイル、いわゆる「ポゼッション」で、ビルドアップ時は最終ラインと中盤が狭いエリアでボールを動かす。そうして相手を誘引し、サイドのプレイヤーがボールの出口となって擬似カウンター。昨年の三苫をうまく活用したブライトンがイメージしやすいかと。また、奪われた直後のリカバリーが早く、カウンターから失点といった場面が少ないのも強み。
そしてサイドアタックが効果絶大。ウイングやサイドハーフのように大きく張り出し、ポジションをとってチームの幅を作るスタイルではないが、組み立てからフィニッシュまでこなす現代型サイドバックが両サイドに配置されている。
この両サイドはそれぞれ特長が異なっており、個を活かした縦への推進力が武器の右サイド、ボールを保持しながらユニットで相手を崩す左サイドとチーム戦術の幅を持たせている。このチームにおけるサイドのタスクは驚くほど多いが、グリマルドが9ゴール10アシスト、フリンボンが8ゴール4アシストと桁違いの数字を記録している。
ハイプレスとポゼッションという現代サッカーのキーワードを戦術に落とし込んでいて完成度も高い、まるでビッグクラブかのようなサッカーを展開している。
昨シーズンまでと何が違う?
新加入選手
FW:ボニフェイス、ホフマン
MF:グリマルド、ジャカ
今シーズンの安定感はジャカがもたらしたものと言えるかも知れない。アーセナルからドイツに帰還した彼は、圧倒的なリーダーシップで「6番」の選手としてチームの心臓となっている。ボニフェイスやホフマン、グリマルドといった新加入選手たちも期待通りの働きをしているが、ジャカはそういった選手たちの能力をより引きたてることができている。
レバークーゼンに必要だったピースは、泥臭く戦えて、ゲームを作るクリエイティブなキックを持ち合わせる選手。まさしくシャビアロンソのような選手だ。そのシャビアロンソと比較され続けた選手であるジャカをシャビアロンソ自身が獲得した。これこそが昨年と大きく違う部分であり、昨シーズンの堅守速攻→ポゼッションに方向転換できた大きな理由である。
そしてもう一点、ホフマンという「ハードワークするチャンスメーカー」の存在。
彼の存在がフリンボンを高い位置でプレーをさせ、ヴィルツのテクニックを活かし、ボニフェイスのフィニッシュにつなげている。何よりライン間で受けるポジショニングはレバークーゼンの戦術とマッチングしているため、なくてはならない存在となりつつある。地味な選手かも知れないが、多様性、補完性の高さこそが彼の大きな武器であり、昨シーズンのレバークーゼンに度々発生していた攻撃時の閉塞感を払拭してくれている。
気になるのが選手層の薄さである。今回FWのボニフェイスが負傷離脱した。彼はチームに欠かせないフィニッシャーでありチャンスメーカーである。また守備時はハイプレスの一員であり、即時奪還のファーストアタッカーでもある。このように替えの聞かない要員がレバークーゼンには非常に多いことが今後どのような影響をもたらすのか。
シャビアロンソ監督について
~どんな監督でどうやってチームを変えたのか~
2022年10月に当時降格圏に沈むレバークーゼンの監督に就任。自身としては初のトップチーム監督就任だった。就任後最終順位は6位としELでもベスト4まで進出、チームを短期間で完全に立て直した。
真っ先に着手したのが守備の再構築。5−2−3の守備ブロックはチームに安定感をもたらしたが、攻撃はうまくハマらない感が強かった。そんな昨シーズンの問題点をどう改善するのか。
そして幕を開けた今シーズン。攻撃面での大きな変化は「丁寧なビルドアップ」であった。狭いエリアで数的優位とスペースを作り出す。そして擬似カウンターという得点確率を上げるために有効な戦術が採用されていた。
「重要なのは人数を数えること」と語っていることからビルドアップ時の3−2など数字の並びだけで判断せずに、相手の基準に合わせて人間の比率を変化させながら数的優位を作ることを重要視されていると思われる。 こういった面からも一つの戦術にこだわるタイプではなく相手に応じて複数の戦術を持ち合わせる監督なのかも知れない。余談になるがシャビアロンソにはリバプールやバイエルンが熱い視線を送っているとの話も出てきはじめている。
レバークーゼン各選手の成績
ブンデスリーガ23/24ゴール数
ヴィクター・ボニフェイス | 10 |
アレハンドロ・グリマルド | 9 |
ジェレミー・フリンポン | 8 |
フロリアン・ヴィルツ | 6 |
ネイサン・テラ | 5 |
ブンデスリーガ23/24アシスト数
アレハンドロ・グリマルド | 10 |
ヴィクター・ボニフェイス | 7 |
フロリアン・ヴィルツ | 7 |
ヨナス・ホフマン | 6 |
ジェレミー・フリンポン | 4 |
このほかにも
CB:ヨナタン・ター 4G 0A
MF:エセキエル・パラシオス 3G 3A
FW:パトリック・シック 3G 1A
FW:アミン・アドリ 2G 4A
など多くの選手が得点に関与しており、バイエルンのケインのようなスーパーな選手はいないが、フィールドプレイヤーが全体的に攻守に関わっている点はレバークーゼンの強みではないだろうか。
注目選手紹介
①DF:グリマルド
・スペイン出身の28歳でバルセロナカンテラ育ちの攻撃的な左SB。
・ベンフィカからフリーで獲得。
・精度の高いキック、攻撃センスで昨年末に初代表選出。
・来シーズンにバルサ復帰か?
②DF:フリンポン
・オランダ代表の22歳でマンC下部組織出身の右SB。
・セルティックより加入。
・スピード系ドリブラー。
・バイエルン、マンUが興味?
③MF:ヴィルツ
・ドイツ代表の20歳でケルン下部組織出身の攻撃的MF。
・レバークーゼンの10番であり、ドイツの未来を背負う司令塔。
・テクニック、インテリジェンス、視野の広さなど水準は非常に高い。
・2025年まではレバークーゼン残留の方向らしいが、イスコの後釜としてマドリーや バイエルンなどビッグクラブが照準を定めている。
まとめ
ここまで、今シーズン絶好調のレバークーゼンをまとめて解説してきました。
もう優勝したかのような内容もありますが、まだまだ何も決まっていません。が、vsバイエルン戦を見た限りではそうそう負けることはないと感じています。それほど今のレバークーゼンは強い。バイエルン相手に3−0のゲームができるチームが世界でどれほどあるでしょうか。マンCやPSG、マドリーでも難易度は相当高いです。
リーグもカップもELも全て含めた今シーズンも終盤戦に入っていきます。レバークーゼンは最後に笑えうことが出来るのか?今後の展開からますます目が離せませんね。
では、また。