ワールドカップ予選も始まり、サッカー熱も徐々に高まってきましたね。さまざまなところでその熱量をひしひしと感じます。そんな中、「レアル・マドリードって何が変わったの?」という質問を受けました。少し前のレアルマドリードを知っている方達にとっては「銀河系軍団」のイメージが強いと思いますが、最近はあまりタレント集団的なニュースもなく、強いのは知っているけどよくわからないといった状況の方もいることでしょう。
今日はそんな「新生レアル・マドリード」についてざっくり解説していこうと思います。
レアルマドリードのクラブプロフィール
クラブ名 | レアルマドリード(Real Madrid) |
愛称 | ロス・ブランコス (Los Blancos) |
国 | スペイン |
設立 | 1902年 |
代表 | フロレンティーノ・ペレス |
ホームスタジアム | サンチャゴ・ベルナベウ |
ホームタウン | マドリード |
収容人数 | 81044人 |
レアル・マドリードはイギリスの二つの大学卒業生がマドリードに設立したものが始まりと言われています。1900年、このクラブがのちに2つに分裂し、うち一つがレアル・マドリードの前身となります。当初はただのサッカー愛好家団体でしたが、国内でのサッカー人気の高まりや精力的に活動していたことから1902年にマドリード・フットボールクラブとしてサッカークラブ組織として公式に設立されました。
そしてこの頃から強豪クラブとして名を馳せていたレアル・マドリードですが、ファン増加に伴い、「多くのファンに観戦してもらって増収」に舵を切ります。当時マドリード最大スタジアムをホームとし、収益を上げて良い選手を獲るという、プロフェッショナル思考に進んでいきます。当然ながらいざこざが発生しますが、このタイミングでレアル・マドリードに伝説の選手が誕生します、それが「サンチャゴ・ベルナベウ」です。
そして1920年、国王から「レアル」の称号をもらったチームは「レアル・マドリード」と改名します。その後スペイン国内で内乱が勃発するなどスペイン自体が混乱期に突入していくこととなります。
時は進んで2000年代となりますが、この辺りからがいわゆる銀河系のイメージが定着していくこととなります。フィーゴ、ジダン、ロナウド、ベッカムといった人気銘柄を買い集めた戦略ですね。この戦略がレアル・マドリードを世界屈指のブランドへと押し上げます。こういったチームの近代化が大成功を収めることとなり、多くのタイトルを獲得することとなっていきます。
ラ・リーガ34回
国王杯(コパ・デル・レイ)19回
スーペルコパ・デ・エスパーニャ11回
コパ・デ・ラ・リーガ1回
数々の実績が物語っているように、名実ともに世界3大クラブの一角ではないでしょうか。
これまでの主な戦績
シーズン | 順位 | カップ戦 | スーペルコパ | CL | スーパーカップ | CWC |
2014-15 | 2位 | ベスト16 | 準優勝 | ベスト4 | 優勝 | 優勝 |
2015-16 | 2位 | ベスト32 | 優勝 | |||
2016-17 | 1位 | ベスト8 | 優勝 | 優勝 | 優勝 | |
2017-18 | 3位 | ベスト8 | 優勝 | 優勝 | 優勝 | 優勝 |
2018-19 | 3位 | ベスト4 | ベスト16 | 準優勝 | 優勝 | |
2019-20 | 1位 | ベスト8 | 優勝 | ベスト16 | ||
2020-21 | 2位 | ベスト32 | ベスト4 | ベスト4 | ||
2021-22 | 1位 | ベスト8 | 優勝 | 優勝 | ||
2022-23 | 2位 | 優勝 | 準優勝 | ベスト4 | 優勝 | 優勝 |
2023-24 | 準優勝 |
※空欄は不参加。
今シーズンもリーグ戦は半分以上を消化し首位をキープ。CLはベスト8で大一番のマンチェスターシティー戦を迎えます。見どころは4月のCLはもちろんですがCL直後のライバルであり1位2位直接対決となるバルセロナ戦(クラシコ)は要注目です。
レアルマドリードの基本フォーメーション
4−3−1−2または4−4−2を基本布陣としています。(画像は4-3-1-2)
GK:ルニン、ケパ
右SB:カルバハル、ルーカスバスケス
CB:リュティガー、チュアメニ、ナチョフェルナンデス
左SB:メンディ、ファンガルシア
DMH:ガマビンガ、モドリッチ、トニクロース
OMF:バルベルデ、ブラヒムディアス、ベリンガム
FW:ヴィニシウス、ロドリゴ、ホセル
このあたりがメインキャストになっています。 特にチュアメニ、ガマビンガ、トニクロースに関しては本職以外の複数ポジジョンをこなすユーティリティ性を持ち合わせています。
レアルマドリードの基本戦術
まずレアルマドリードの監督であるアンチェロッティはシーズン前と現在でかなり構想が違うはずです。なぜなら、①ベンゼマに変わる絶対的なFWを獲得できなかった。②クルトワの離脱③ミリトン、アラバの離脱。これら3つの要素はチームのセンターラインに関わる大事であるためです。
チームの軸を変更せざるをえないということは、チームの方向性自体を変更することとなり、戦術やシステムの変更を意味します。そんなシーズンを左右する大事件がレアル・マドリードを直撃していたのです。まるで緊急手術のような状況だと言ってもいいでしょう。
9番がいない今、ベリンガムをトップ下に置いて偽9番化する、左SBがいなくなればカマビンガをコンバートする、中盤が強度不足ならバルベルデを右FWに置き上下動させる、チュアメニが負傷すればクロースを守備的MF化し、彼の守備力が足りないとなると横にバルベルデやモドリッチを並べる、ビニシウスが欠場ならホセルをCFとしてロドリゴを彼の周りで動かしてゲームメイカー化するか、ロドリゴを偽CF化してブラヒムをゲームメイカー化してカバーするなど、基本戦術はその都度変化するといっていいほどです。
それだけ戦術の引き出しが多い監督と、多種多様なタスクをこなせる選手が揃っているとも言い換えることができます。
レアルマドリードの攻撃戦術
レアルマドリードの攻撃といえばカウンターアタックですね。それを可能にするのは爆発的な推進力を持つヴィニシウスとロドリゴの二人です。しかしこの二人は前線で起点となることは不得意で、前を向いてスペースにボールを呼び込むことで初めてその推進力が発揮されます。
では誰が起点となるのか。それがベリンガムです。まさにベリンガムシステムと言っていいほど現在のレアル・マドリードのメインキャストとなっています。
そしてもう一点がモドリッチ、クロースのクリエイティビティから脱却したこと。新たにバルベルデやガマビンガと言ったモビリティを前面に押し出すスタイルにモデルチェンジしたことで、個人のアイデアに頼った攻撃から再現性の高い攻撃を実現しています。
クロースとバルベルデ、モドリッチとガマビンガという組み合わせは創造力と機動力をもたらし、それらがベリンガムと組み合わさることで高い攻撃力をもたらしています。 イメージはピルロ、セードルフ、ガットゥーゾの前でプレーするカカーがいた時代のACミランが最も近い気がします。
レアルマドリードの守備戦術
今季のレアル・マドリードが勝ち点を落とさない理由は崩しの再現性の高さとそれに伴うネガティブトランジションの安定、そしてプレッシングによる守備強度の向上にあると考えています。
そのトランジションにおいて軸になるのはここでもベリンガム。ロドリゴとヴィニシウスの2トップは、ファーストラインを形成する選手としての戦術理解度が低く、カバーシャドウで背中の選択肢を消しながらファーストDFを決め、ハイプレスに転じるといったことが難しい現状、ベリンガムを頂点に置いて最初にファーストDFを決める役割を与えることで、チーム全体がラインを押し上げる機会を生み出すことができる点で有効な手段となっています。
そして今シーズンの象徴とも言える強固なブロックはバルベルデが中心となります。守備時4−5−1のゾーンディフェンスを実行するレアルマドリードは、バルベルデが臨機応変にCBとSBの間に落ちてサイドのスペースを消します。これによってサイド攻撃を無効化することが可能になるというわけです。
いずれにしてもリーグ最小失点であることから守備のモデルチェンジは大成功と言って良いでしょう。
層の厚さは健在か?
レアル・マドリードといえば分厚い選手層と思われがちですが、今シーズンに関していえば台所事情はかなり厳しいといえるのではないでしょうか。相変わらずとも言えるような大金でドルトムントからベリンガムを獲得しましたが、アセンシオやアザール、ベンゼマといったビッグネームが退団しています。また、怪我で長期離脱を余儀なくされているクルトワ、ミリトン、アラバは今シーズン絶望とも報道されており、特にDFに関してはターンオーバーをしている余裕はないと感じます。
またモドリッチとクロースには年齢的なリミットが近づいてきているため、出場できる時間が限定的であると考えるとMFも層が厚いとはいえません。
FWも実績ある選手がヴィニシウスとロドリゴだけと考えると替えがきく状況ではありません。チームはこういった状況からもシーズン前にケインやエムバペ獲得に動いたと言われます。しかし残念ながら獲得には至らず、9番不在という状況は現在も続いています。 そして一説では新スタジアム改修費用の1200億円ほぼ借入に加え、パンデミックで相当な減益となったため資金繰りが厳しくなってきているとの噂も・・・。相思相愛と言われるエムバペをとれなかったのも納得できますね。
注目選手
ジュード・べリンガム
今シーズンブンデスリーガのドルトムントから加入したベリンガム。攻撃も守備も彼からスタートする、新生レアル・マドリードの象徴となっている選手です。BOX to BOXタイプのプレイヤーで、偽9番や6番の仕事まで幅広いタスクを背負ってゲームに関わり続ける彼は今シーズン、すでにキャリアハイとなる16ゴール4アシストを記録。チームとしては9番がいないことを感じさせないほどの数字を叩き出しています。このまま優勝すれば2023−24は「ベリンガムのシーズン」となるでしょう。
フェデリコ・バルベルデ
レアル・マドリードが絶対に売りに出さない選手の一人でしょう。中盤のポジションなら攻撃から守備まで、なおかつCBまでプレーできるユーティリティ性を持っています。
当時監督をしていたジダンに「ウチにポール・ポグバがいた」と言わしめた逸材で、運動量・献身性・推進力・テクニックがストロングポイントで、「とにかく走る。とにかくゲームに関わり続ける」ことでチームを助け続けることができる選手です。
まとめ
いかがだったでしょうか。レアル・マドリードといえば豊富な資金力で超一流選手をかき集め、毎試合ターンオーバーできるようなイメージでした。現在はというとファーストチョイスは一流選手ですが、セカンドチョイスは正直パッとしない・・・そういった状況です。
そして日替わりとも言えるようなシステムとフォーメーションで今シーズン最大の問題を乗り切ろうとしていますが果たしてどうなるのでしょうか。個人的にはレアルマドリードにはこのまま首位をキープしてもらい、優勝まで突き進んで欲しいです。結果がどうなるにせよ、今後の彼らには要注目ですね。
では、また。