サッカーでよく耳にする言葉の1つである「アディショナルタイム」。

皆さんは、このアディショナルタイムが何なのか?何の為にあるのか?どのように決まっているのか?ご存じでしょうか?そこで今日はそのような疑問にお答えすべく、アディショナルタイムの意味や決め方、ルールについて徹底解説していきたいと思います。

この記事を読めば、「アディショナルタイム」の全てを理解することができ、サッカーをより楽しめることと思います。

それでは、早速いってみましょう!

アディショナルタイムとは

アディショナルタイムとは、前後半それぞれの規定試合時間の後に、追加される時間のことです。

これだけでは分からないという方に向けて、もっと分かりやすく説明していきます。

サッカーでは、選手の交代やファールによる試合の一時的中断、選手のケガや治療などで、試合時間は進んでいるけど、プレーが止まっている空白の時間が存在します。その空白の時間のせいで、プレーする時間が短くなってしまわないように、前後半それぞれの規定試合時間の後に、「アディショナルタイム」として時間を追加することで、プレー時間を確保しています。前後半合わせて90分間のプレー時間が約束されるということですね。

アディショナルタイムの意味と語源

アディショナルタイムの意味

アディショナルタイムがある意味としては、もちろん試合中に発生した空白の時間分のプレー時間を確保するという意味がありますが、公平な試合環境の提供という意味もあります。

もし、アディショナルタイムがなかったら、遅延行為が多発し、損をしてしまうチームが出てきてしまいます。そんな不公平な状況になることなく、公平に試合が行えているのも、このアディショナルタイムのおかげだと言えますね。

アディショナルタイムの語源

「アディショナルタイム」は、英語で「additional time」と表記します。

「additional」は、「追加の」という意味を持つ単語で、「time」と組み合わせると、「追加の時間」ということになります。

アディショナルタイムとロスタイムの違いについて

結論から言うと、この2つは全く同じです。呼び方に違いはありますが、意味は同じです。

過去にはロスタイムと呼ばれていた

今では「アディショナルタイム」で浸透していますが、少し前までは「ロスタイム」と呼ばれている時代がありました。そもそもロスタイムは、「loss of time(失われた時間・ロスした時間)」を略した和製英語で、日本でのみ使用されていた言葉です。

2000年以前と2000年頃までは、ロスタイムとの呼び方が一般的でした。古くからのサッカーファンであれば、こちらの方が馴染みがあるという方もいるかもしれませんね。

ロスタイムからアディショナルタイムになった理由

では、なぜ「ロスタイム」から「アディショナルタイム」に変わったのか?

理由は主に2つあります。1つは「ロスタイム」という言い方が日本でのみ使われていた為、国際基準に統一しようといった理由と、もう1つは、「ロスタイム」という響きにネガティブな印象を受けるといった理由です。

そういった理由から、2010年に日本サッカー協会が「アディショナルタイム」に名称を統一したことで、それをきっかけにこの言い方が浸透していきました。

ですので、ロスタイムは、アディショナルタイムの前の言い方というだけで、意味は全く同じということになります。

アディショナルタイムはなぜあるの?

アディショナルタイムの意味のところでもお伝えしましたが、アディショナルタイムは試合中に発生した空白の時間を規定試合時間の後に追加するという役割と、遅延行為などの抑制による公平な試合環境の提供という役割を持っています。

アディショナルタイムは、ただ単に空白の時間の追加をしているだけだと思いがちですが、フェアに試合を行うといった部分でも貢献しています。

アディショナルタイムの決め方と決定者

まず、アディショナルタイムを決定するのは、「主審」です。主審が腕時計を2つ身に着け、1つは45分間止めず、1つは試合が中断される度に止めます。そしてこの2つの時間の差がアディショナルタイムとなります。

ですが、アディショナルタイム追加の対象となるものとそうでないものがあります。試合の中断つまり、プレーが止まれば全てアディショナルタイムになるわけではありません。

アディショナルタイムの測り方

アディショナルタイムは、プレーが止まっていた空白の時間を規定試合時間の後に追加するというものですが、プレーが止まれば必ずしもアディショナルタイムとして追加される訳ではありません。アディショナルタイムとして追加される対象とそうでないものがあるわけですね。

ここでは、アディショナルタイムとして追加される例と、追加されない例を詳しく解説していきます。

アディショナルタイムとして追加される対象

追加される対象としては、以下のようになっています。

・選手交代
・負傷者の治療や搬出
・カードの掲示
・VARのチェックやレビュー
・遅延行為
・選手同士の乱闘や観客の飛び込み等によるトラブル

選手交代時に歩いたり、ファール時にわざと痛がったりする遅延行為は、全くもって無意味ということですね。最近導入されたVARも、そのレビューなどにかかる時間は、追加対象のようです。

アディショナルタイムとして追加されない対象

逆に追加されない対象としては、以下が挙げられます。

・ボールがピッチ外に出た後から、プレーを始めるまでの間(ゴールキック、コーナーキック、スローインなど)。
・負傷者がピッチ外で治療しているが、試合が進んでいる場合。
・天候悪化による試合中断
※アディショナルタイムではなく、試合中断として扱われる為、中断した時間から試合が再開する。

アディショナルタイムに上限下限はあるの?

アディショナルタイムに上限や下限はあるのでしょうか?

結論、アディショナルタイムに上限下限はありません。どれだけ長くても、短くてもいいです。

アディショナルタイムなしで試合が終わることもあれば、アディショナルタイムが10分以上といった場合もあります。時間に決まりはなく、あくまでも試合状況によって決まっているようです。

正確なアディショナルタイムは?
アディショナルタイム〇分は、「〇分0秒~〇分59秒」

アディショナルタイムとして表示されている時間は、最小限の時間になります。具体的に言うと、アディショナルタイムは基本的に、表示された分数代まで試合が継続されることになります。

例えば、アディショナルタイムが5分だった場合、5分ぴったりに終わるわけではなく、5分0秒~5分59の間のキリがいいところで試合が終了されます。ゴール前での攻防がずっと続いているとかであれば、もう少し長くなることもあるかもしれません。

アディショナルタイムが表示より長くなる理由

アディショナルタイムが表示された分数より、早く終わることはありません。先ほどお伝えした通り、表示された時間を最小限の時間として、表示された分数代まで継続可能となっています。

では、なぜ表示より長くなるのでしょうか?その理由を解説していきます。

遅延が発生する為

アディショナルタイム中に遅延が発生し、アディショナルタイムが表示時間より長くなることがあります。選手交代や選手の負傷、VARなどはアディショナルタイム中に起こることももちろんあります。そんな遅延によってアディショナルタイムは表示の時間より長くなることが多いです。

得点の可能性を潰さないようにする為

遅延という理由以外でも、アディショナルタイムが延長されることはあります。それは得点の可能性を潰さないようにする為です。ゴール前での攻防やゴールに直結する場面などの得点に繋がりそうなプレー中は、アディショナルタイムを過ぎていても、主審は試合を止めません。

守備側のチームがボールを保持する、相手自陣までクリアするなどした時に、試合が終了されます。

アディショナルタイムがさらに追加される場合がある

アディショナルタイムはさらに追加される場合があります。アディショナルタイム中に発生した試合中断や遅延行為などは、追加の対象になります。アディショナルタイムに入っても遅延行為は意味ない訳ですね。

例えば、アディショナルタイムが残り1分の時に、選手の負傷等により試合が一時中断した場合、その残り1分がアディショナルタイムとしてさらに追加されるということです。5分間の中断であっても追加されるのは1分のみです。

VARの導入により、アディショナルタイムは長くなる傾向へ

jleague.jpより引用

2018年のVAR正式導入により、誤審の減少や判定精度の向上の効果がありましたが、アディショナルタイムは導入前に比べ、長くなる傾向が見られています。VARのチェックやレビューなどで、試合の中断が多くなったことが原因でしょう。

アディショナルタイムの平均時間は?

アディショナルタイムの平均時間は、おおよそ4分と言われています。だいたい1試合辺り、4分ほどの中断があるといった感じでしょうか。ですが、最近になってこの平均時間も伸びてきているように感じます。VARの導入はもちろん、FIFAの方針で、試合中断時間をより正確に計測しようという動きがあるからです。2022年のワールドカップでは、平均で10分ほどのアディショナルタイムが取られていたようです。

ひと昔前はアディショナルタイム2~3分とかもありましたが、最近はあまり見なくなりましたね。

アディショナルタイムの最長時間は?

では、これまでのアディショナルタイムで取られた最長時間はどのくらいなのでしょうか?

それは、「28分」だそうです。選手の負傷により、治療と搬出に時間がかかってしまったことが原因みたいですね。ここまでアディショナルタイムが長くなることはまずないと思いますが、それでも10分前後になることも珍しくなくなってきています。集中力や体力の持続、残り時間を考慮した戦術などが必要になってきますね。

アディショナルタイムのお知らせ方法

アディショナルタイムはどうやって選手や両ベンチ、観客に知らせるのでしょうか?
サッカーをよく見る方であれば、ご存じかもしれませんね。

お知らせ方法としては、前後半それぞれの終了間際ぐらいに第4審判がハーフライン辺りで、電光掲示板などを掲げることでお知らせします。ただし、両ベンチに関しては、口頭でアディショナルタイムを伝えているようですね。

それまでに主審は、第4審判に決定したアディショナルタイムを伝達しておく必要があります。

以前はアディショナルタイムが全員に知らされなかった?

現在は、電光掲示板などで全員に知らせる方法が一般的になっていますが、1998年のワールドカップフランス大会までは、アディショナルタイムは全員には知らされず、主審のみが把握していました。

それを変えるきっかけとなったのが、1998年のワールドカップアジア予選です。日本代表対アラブ首長国連邦代表の試合において、ケガによる負傷者が発生した為、長めに取られるはずとされていたアディショナルタイムが極端に短く、問題となったことがきっかけだそうです。

それ以降は、現在の形である電光掲示板でのお知らせ方法になったみたいですね。

アディショナルタイムに得点が入ったら?表記方法は?

アディショナルタイム中に得点が入った場合の表記方法は、アディショナルタイム以外に入った得点時と少し表記が異なります。

アディショナルタイム以外の得点時は、

・前半30分のゴールであれば、「30分」と表記します。
・後半30分であれば、「75分」(前半45分に30分を足す)と表記します。

ですが、アディショナルタイム中に入った得点の場合は、

・前半アディショナルタイム1分で得点が入った場合、「45分+1分」と表記します。
・後半アディショナルタイム1分であれば、「90分+1分」と表記します。

このように少し表記が異なるので、注意しましょう。

アディショナルタイム中に大切なこと

気を抜かない・諦めない

これは気持ちの問題ですが、アディショナルタイムに突入したからと言って気を緩めたり、諦めてはいけません。例え、残り数分であっても最後まで戦い抜く、走り抜く強い気持ちが大切です。残り数分であっても試合がひっくり返ることはよくあります。実際に、サッカーの逆転劇なんかも、このアディショナルタイムから生まれることも多いです。ですので、勝っていても負けていても最後まで戦い抜くということを意識するようにしましょう。

戦術の確認と認識

アディショナルタイムに突入するということは、ほとんどの場合、試合時間が残り数分ということになります。そして先ほどもお伝えした通り、アディショナルタイムではスコアをひっくり返すことも、ひっくり返されることもよくあります。だからこそ、その時のスコアやチームの置かれている状況によって戦術を組み直したり、またその戦術をチームの全員で共有することが大切になってきます。

例えば、負けているチームが全員で引いて守っていたら、スコアをひっくり返すことが難しくなりますし、勝っているチームがゴール前でリスクを犯すのも得策とは言えません。このようにアディショナルタイムには、それぞれの状況やスコアによって戦術をチーム全員で確認し、認識しておく必要があります。

アディショナルタイムについての豆知識

フットサルはタイムキーパー制の為、アディショナルタイムがない

見出しのように、フットサルにはアディショナルタイムが存在しません。それは、フットサルがタイムキーパー制で行われるからです。サッカーのように、試合が中断している時に時間が進むことはなく、あくまでプレー中しか時間は進みません。選手の負傷や何かしらのトラブルがあれば、時間は止められます。キックインやフリーキック時も蹴るまで時間は止まっています。これらの理由により、フットサルにはアディショナルタイムがないのです。

アディショナルタイムに起きたドラマや名シーン

アディショナルタイムとして与えられる時間は、ほとんどが残り数分と短い時間ではありますが、これまでアディショナルタイム中には、様々なドラマや歴史的名シーンが生まれてきました。ここでは、その中でも有名な例を2つ紹介したいと思います。

ドーハの悲劇

1994年に開催されたFIFAワールドカップアメリカ大会のアジア最終予選で、本戦出場に王手をかけていた日本代表が迎えた最終第5節に起きた話です。

試合終了間際まで2-1でリードしていた日本代表。しかし、アディショナルタイム(当時はロスタイム)残り数秒での相手のコーナーキックで、同点ゴールを決められます。その結果、得失点差で3位という結果になり、1位通過という結果から一転、予選敗退に終わりました。

当時、日本中がサッカーブームで初のワールドカップ本戦出場を期待されており、注目されていた試合だけに、わずか残り数秒で本戦出場を逃したこの試合は、「ドーハの悲劇」と呼ばれ、日本中が悲しみに包まれました。

その時の動画がありましたので、ぜひご覧ください。

YouTube:FOOTBALL FACTさんより引用

ロストフの14秒

これは、皆さんの記憶にも新しい出来事ではないでしょうか?

2018年、FIFAワールドカップロシア大会の決勝トーナメント1回戦で、日本は優勝候補とされていたベルギー代表と対戦。後半2分、後半6分にゴールを決め2点をリードする展開に。ですが、その後に2点を返され、2-2の同点で迎えた後半アディショナルタイム。日本代表のコーナーキックからのカウンターで失点。そのまま試合は終了し、2-3で敗戦となりました。この逆転ゴールは、わずか14秒の間に起きた出来事だったことから、「ロストフの14秒」として日本サッカー界の歴史に名を刻むこととなりました。

後半途中まで、優勝候補のベルギー代表相手に2点リードする試合展開を見せ、日本初のベスト8進出は目前だと思われたが、わずか14秒の間に起きた出来事により1回戦敗退となったこの試合は、ドーハ以来の悲劇として、語られています。

ぜひこの動画をご覧ください。

YouTube:FOOTBALL FACTさんより引用

まとめ

さて、今日はサッカーのアディショナルタイムについて、詳しく解説してきました。

アディショナルタイムは、残り数分と短い時間であるにも関わらず、試合が動きやすい時間でもあります。それによって今までたくさんのドラマや名シーンが生まれてきました。サッカーの試合で注目するべきポイントの1つだと言えますね。

だからこそ、アディショナルタイムとは何か?誰がどうやって決めているのか?どんなルールがあるのか?など、その背景を知ることが出来れば、さらにサッカーが楽しくなるでしょう!

では、また。

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