最近サッカー界でよく耳にする「VAR」。皆さんは、「VAR」が何かご存じでしょうか?サッカーはよく見るけど、知らない、よく分からないなんて方も多いのではないでしょうか?

そこで今日は、VARを知らない方やもっと詳しく知りたいという方に向けて、徹底的に解説していきたいと思います。この記事を読めばVARの全てが分かります!

それでは、早速解説していきます。

VARとは?

VARとは、ピッチ上とは別の場所で、映像を用いて主審をサポートする審判員のことです。副審という位置付けになりますね。

試合における重要なプレーや判定、判断が難しい場合などに映像を用いて、主審の判定をサポートしたり、判定が間違っていなかったのかをチェックすることが役割となります。

VARとは何の略?

VARは、Video Assistant Referee(ビデオアシスタントレフリー)と言います。

Video Assistant Refereeの頭文字をとって、VARと呼ばれています。

「ヴ(ブ)イエーアール」と呼ぶことが一般的ですね。

VARの意味と始まり

意味

ビデオ(video)映像を使用し、ピッチ上の主審をアシスタント(assistant)する審判(referee)のことです。文字通りなので、イメージはしやすそうですね!

始まり

2016年にFIFAが世界に発表し、その後世界各地のリーグや公式戦で採用されるようになりました。

2018年には、FIFAワールドカップ(ロシア)でも使用され、現代サッカーに欠かせないものとなっています。

VARの哲学

JFA.jpより引用

JFAは、「最小限の干渉で、最大限の利益を得る」ことをVARの哲学としており、これはVARという仕組みを運用していくにあたっての1番基本(根っこ)となるものです。

VARの目的

VARの目的は、哲学にもある通り、あくまでも主審のアシスタントの役割で、「はっきりとした間違い」や「重大な場面を見逃した」などをなくす為にできた制度です。その為、試合中全ての判定に介入するわけではありません。

VARが導入された背景とは?

VARが導入されることになった1番の原因は、「誤審」を防ぐ為でしょう。やはり審判も人ですので、重要な場面での判定や、勘違いや見間違い、判定ミスなどもしてしまいます。そういった「誤審」によって不利益を被る人やチームがいることが以前から問題視されていました。そんな中で、その改善策として導入されたのがVARです。

誤審として有名な所で言うと、マラドーナの「神の手」などが挙げられますね。

VARはいつから導入された?

ビデオを用いた審判制度が動き出したのは2010年代。

そこからアメリカの下部リーグやイタリア代表対フランス代表の親善試合などで試験的に導入され、2016年12月に開催されたFIFAクラブワールドカップ2016で初めて公式戦で採用されました。

2018年には、国際サッカー評議会(IFAB)がVAR制度の正式導入を発表します。そして同年のFIFAワールドカップロシア大会では、ワールドカップとしては初めてVAR制度を用いて大会を進行させました。ですので、VARが正式に導入されたのは2018年ということになります。

その後は世界各地のリーグや公式戦で導入されていき、VARの存在が世界中に浸透していきました。

VARはいつ、どんな時に使うの?

goal.comより引用

VARがどんなものなのか、少しでも理解できましたでしょうか?

では、実際の試合でVARが使われるのは、いつどんな時なのでしょうか?ここでは、VARがどんなタイミングで使われるのかについて解説していきます。

VARが使われるタイミングは、主に4つです。

① 得点かどうか(得点に関わる場面も含む)

サッカーの勝敗を分ける「得点」は、VARによって確認されます。具体的には以下です。

・ボールがしっかりとゴールラインを超えたのか
・オフサイドはなかったか
・その他反則はなかったのか

② PKかどうか

PK(ペナルティキック)は、得点に大きく関わります。それに関係するプレーはVARによって確認されます。具体的には以下です。

・反則があったのか
・ペナルティエリア内なのか、外なのか
・PKに値する反則だったのか

③ 退場かどうか(2回目のイエローカードは対象外)

選手の退場に関わるものも、VARで確認されます。具体的には以下です。

・1発退場となるファールかどうか
・プレーと関係ない場所や審判の視野外での悪質な行為
・三重罰かどうか
※三重罰とは…1度のファールで、PK、退場、時節出場停止が与えられること。

④ 警告退場の人違い

イエローカードやレッドカードを出した選手が間違っているかどうかの確認もVARで行います。具体的には以下です。

・カード対象者に間違いはないか(人違いでカードを出していないか)

VARはどこまで遡ってチェックできるの?

VARを遡れる範囲は、「攻撃態勢が続いていたか」で決まるようです。具体的には、自陣でボールをキープしている時間は対象にはならず、相手自陣に侵入あるいは相手ゴールに向かっている、つまり「攻撃態勢」になっている範囲であれば遡ってチェックが可能なようです。実際に数十秒前のファールにVARが介入してゴールが取り消された事例などもあるみたいですね。

簡単に言うと、VARがどこまで遡れるかは、攻撃をしている時間であれば遡れるということですね。

VARの仕組み

premier leagueより引用

VARは、会場に最低4台(ロシアワールドカップは33台設置)のカメラを設置して、VARの対象となるプレーを監視します。その対象となるプレーが発生した時に、VARチームが映像を確認しながら、主審に助言や提案を行います。それを元に主審は今後の判断を決定することになります。

VARチームは、各リーグや大会などによってバラバラですが基本3~4人で構成されています。そして監視場所は、スタジアム内のどこかかスタジアム近くのコンテナや車の中等と指定されています。

常に主審とVARは連絡を取れるように繋がっており、一つ一つのプレーに対して迅速な判断と対応が求められています。

VARのルール

premier leagueより引用

VARは、重要な判定や見逃しがあった時に使用することになっています。その為、全ての判定に対して介入するわけではなく、介入しないケースもあります。「VARはいつ、どんな時に使うの?」のところでもお伝えした通り、①得点かどうか、②PKかどうか、③退場かどうか、④警告退場の人違いの4つが介入する対象となります。

では、介入しないケースはどんなケースなのでしょうか?

・得点に関わらないペナルティエリア外でのファール
・確実な(誰が見てもわかる)オフサイド
・明らかに人違いはない時

このようなケースが挙げられます。他にも様々あるかと思いますが、VARは試合の勝敗や進行に大きな影響を与える事象に対してだけ使用するものだと覚えておいてください。

VARの方法(運用方法・流れ)

では、実際にVARの対象となる出来事が発生してから、どのような流れで運用されているのか?誰がどのように関わり、判断しているのか。その方法について解説していきます。

①VARの対象となる出来事が発生する。

②VARが映像を用いてチェックを行い、主審と交信する。
この時、主審は片方の耳に指を当てながら、もう片方の手を伸ばすシグナルをする。(チェックを行っていることを選手や周りに知らせる為)

JFA.jpより引用

③「はっきりとした明白な間違い」がなかった場合、VARは主審にチェックが完了したことを伝える。
→VARは介入しない
 「はっきりとした明白な間違い」があった場合、VARは主審にレビューすることを提案する。
→VAR介入へ(④へ)。

④主審は両手で四角を描くTVシグナルを送り、VARオンリーレビュー又はVARオンフィールドレビューを行う。

theWORLDより引用

VARオンリーレビューとは?

VARからの情報だけで主審が判定を下すこと。

VARオンフィールドレビュー(OFR)とは?

VARからの提案を受けて、主審が自ら映像を確認し、判定を下すこと。TVでよく見るのはこちらですよね。ピッチ中央辺りにある画面で映像を確認しているのがこのVARオンフィールドレビューになります。

goal.comより引用

⑤主審は両手で四角を描くTVシグナルを送り、判定結果を伝える。
※必ずしも判定が変わるわけではない

VARのメリット

では、VARが導入されたことによって得られたメリットにはどんなものがあるのでしょうか?ここではVARのメリットを紹介していきます。

メリット① 誤審が減り、正確な判定が下されるようになった

やはり、1番のメリットはここではないでしょうか。様々な角度や場所から撮られた映像を用いて、主審の判定に間違いがなかったかをチェック出来る為、誤審の数は導入前と比べ、圧倒的に減少しました。判定精度が95%→99.3%に上昇したとのデータもあり、より正確な判定が下されるようになったと言えるでしょう。

また、今まで主審が明らかな誤審を行っても、その判定を訂正することはできませんでしたが、このVARの導入によってそれが可能になったので、審判による誤審で勝敗が決まってしまうなんてことも減少しました。

メリット② 審判の負担の軽減

これは審判以外にはあまり関係ないメリットかもしれませんが、VARの導入によって審判に対する負担は軽減できたと言えるでしょう。見逃してしまった部分や見えていない部分の確認が可能になりましたし、審判の判定を映像を用いて補助してくれます。よりわかりやすい形で正確な判定を下せるようになったので、審判の方にとっては負担の軽減に繋がっているのではないでしょうか。

VARのデメリット

VAR導入によるメリットがある一方で、デメリットもあります。では、一つずつ紹介していきます。

デメリット① VARの判定により、時間がかかる

VARの対象となる出来事が発生した場合、一時的に試合を中断してVARチームと交信したり、映像を確認したりするなど、時間がかかってしまうことがデメリットとして挙げられます。ただ、VARの平均所要時間が80秒だと言われているので、これを長い(時間がかかっている)と捉えるかどうかは人それぞれだと思います。

デメリット② 試合が一時的に中断してしまう

一時的に試合が中断してしまうことは、試合の流れを止めてしまうことになります。サッカーは流れやその場の雰囲気が試合の勝敗に影響を及ぼすことがよくあります。VARの導入によって、この流れを止めてしまうことはよくないのではないかとの声も多く挙がっています。

選手からしてみれば、試合の中断によって良い流れが止まってしまう、集中力が切れてしまうことはデメリットだと言えます。

メリットかつデメリット 「オフサイドディレイ」

オフサイドディレイとは、オフサイドの際に副審が旗を挙げるタイミングを遅らせることです。

なぜこんなことをするのか?これは、オフサイドの判定を下したことにより、得点機会をつぶしてしまわないようにする為です。ですが、VAR導入によりこれは後から確認すればわかるようになったので、副審はオフサイドディレイをするようになりました。副審が旗を挙げることによって、得点機会をつぶしてしまうことがなくなったのはメリットですね。

逆にデメリットとして、選手を無駄に走らせて体力を消耗させてしまうのでは?といった声も挙がっています。また、このオフサイドディレイ中に何か(悪質なファールなど)が発生してしまう可能性があるのはデメリットかもしれませんね。

VAR導入後の変化

実際にVARの導入によって、様々な変化がありました。誤審の減少と判定精度の向上、審判への負担軽減や公平な試合結果の提供など、VARの導入はサッカー界においてたくさんのメリットをもたらせてくれたと言えるでしょう。

また、VARの導入により、選手たちのプレーにも変化があったと思われます。シュミレーションの減少、警告や退場の減少、ファールの減少など、よりクリーンな試合が増加したように思います。

各リーグの変化と現状

では、日本含め世界の各リーグやカップ戦で、VAR導入の影響はどのようなものなのでしょうか?

JリーグのVAR導入

2020年からVARが導入されましたが、ビデオルーム(VARチーム)の人材不足が問題となっています。VARの介入条件など、正確な基準がまだ決まっておらず、サッカーファンからは心配の声が挙がっています。ですが、最近は導入直後に比べ、正確かつ迅速な対応が見られるようになってきたので、今後もよりよい運用を期待したいですね。

オフサイドでノーゴールとされた判定が、VARによりゴールと認められたシーンです。短いのでぜひご覧ください。

YouTube:DAZN Japanさんより引用

アジアカップのVAR導入

アジア審判の信頼性が非常に低く、VARの基準も明確でないので、逆にない方がいいのではないかとの意見が見られるのが現状です。アジアは審判買収などの問題も多いので、早急に現状の改善を行っていく必要があるでしょう。

プレミアリーグのVAR導入

プレミアリーグもVARが導入されていますが、他リーグに比べVARが介入する回数は少なめです。プレミアリーグでは、主審の判定を尊重するという風潮が見られるので、よほどの誤審ではない限り介入しないことが多いです。ですが、オフサイド判定には厳しくミリ単位でのチェックが入る為、その部分に関しては他リーグより厳しいと言えるでしょう。

ワールドカップのVAR導入

2018年のロシアワールドカップで初導入されました。多国籍の審判団による意見の相違などを心配する声もありましたが、スムーズに進行できていた印象です。ですが、大会中に判定基準を変更するなどのトラブルも見られたので、今後のワールドカップでの改善を期待したいですね。

また、大会中過去最多のPK回数を記録するなど、VAR導入による効果もあり、ここから世界に浸透していったとも言えますね。

この通称「三笘の1mm」は世界中で多くの話題になりましたね。

YouTube:Smile footballさんより引用

VARの効果や批判

VAR導入によって、様々な効果が表れ、そしてサッカー界でもたくさんの意見や批判が出てくるようになりました。ここでは、その一部を紹介していきます。

VARの効果

VAR導入によって得られた効果は以下が考えらえます。

・誤審の減少
・公平な試合環境の提供
・審判員たちの負担軽減
・警告や退場の減少
・選手のケガや、悪質な行為による争いの減少
・選手による抗議の減少
・シュミレーションの減少
・PKの増加
・オフサイドの増加
・アディショナルタイムの増加

まだまだ改善点も見られますが、VARによって得られた効果は非常に大きいと言えます。

VARの批判

色んないい効果が得られた一方で、VARを批判する声も未だに多いです。批判的な意見には以下のようなものが多いです。

・試合の中断が多い。
・一度した判定を覆らせる(変える)のはどうなのか。
・映像を見て確認しても、結局判定するのは主審なので変わらないのではないか。
・なんかつまらなくなった。

VAR導入によって、試合が中断されたり、判定が変わることも多くなったので、それはどうなのかという意見もあるようです。

VARがもたらせた影響

これまで解説してきた内容と被る部分がありますが、VARはサッカー界に大きな影響を与えました。判定の正確性だけでなく、審判による偏った判定の減少、審判買収問題の改善など、良い影響を与えているのではないかと私は思っています。ですが、その一方で人材不足や介入基準の明確化など、改善点もまだまだあるので、正しく統一していく必要があると思います。

VARの今後について

sporting newsより引用

2018年の導入からサッカー界に大きな影響を与えた「VAR」。そんなVARは今後、どのように運用されていくのか、どんな問題や改善点があるのか。ここでは、VARの今後について解説していきます。

VARの問題点・改善点

現状、VARには様々な問題や課題が残されています。今後VARをもっと一般的に、そして正しく運用していくには、その課題を一つずつなくしていかなければなりません。

例えば、VARの人材不足や介入基準の策定、運用にかかるコストダウン、試合中断時間の短縮などが挙げられます。こういった課題をなくしていくことが出来れば、VAR制度がもっと一般的に採用されるようになり、よりクリーンで、より正確で公平な試合が行われるようになるかと思います。

VARがもたらす今後の変化(将来性について)

VARは今後も進化を続け、サッカーにとって欠かせない存在となっていくことでしょう。AI技術の導入やコストダウン、少人数での運用が可能になるなど、もっと広く浸透していくことだと思います。そうなれば、プロの試合でなくても運用できるようになり、もっと身近な存在になっていくのではないでしょうか?

今後VAR制度がどのように変化し、それによってサッカー界にどのような効果を与えてくれるのか、非常に楽しみです。

まとめ

さて、ここまでVARについて詳しく解説してきました。VARとは何か?から始まり、今後についてまで、VARの全てを徹底的に深堀りしてきました。VARの導入は、様々なメリットがある一方でまだまだたくさんの課題が残されています。こういった課題を一つずつ解決していくことが、これから必須とされ、それがより公平で正確な試合環境の提供に繋がっていきます。

サッカー界の明るい未来に向けて、VARの今後の進化に期待していきたいですね!

では、また。

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