2024年シーズンが開幕し、早くも波乱の展開を見せているJ1リーグ。戦前の予想通り荒れたシーズンとなっています。そんな2024年現在、首位に立っているのは誰が予測したであろう、町田ゼルビア。昨シーズン悲願のJ2優勝を掴み取り、今シーズン初めてJ1昇格を果たした「新参者」の好調な理由を探っていきましょう。
町田ゼルビアのクラブプロフィール
クラブ名 | 町田ゼルビア |
設立年 | 1989年 |
ホームタウン | 東京都町田市 |
ホームスタジアム | 町田GIONスタジアム(町田市立陸上競技場) |
クラブカラー | ブルー |
獲得タイトル | 2023年J2優勝 |
町田という街について
町田市は東京都の多摩地域南部に位置する都市で人口は約43万人です。都内では東京23区、八王子市に次いで3番目に人口が多く、東京都のベッドタウンとしても知られています。 町田は商業都市として発展し町田駅を中心に百貨店やファッションビルなどの大型商業施設が集まり、繁華街として賑わっています。また町田市は多摩地域の中心都市であり、サッカー人気も高い土地柄で、ゼルビアの好調も相まってサッカー熱はさらに高まっています!
町田ゼルビアの過去戦績
年度 | カテゴリー | J年間順位 | 天皇杯 | 監督 |
2014年 | J3 | 3位 | 予選敗退 | 相馬直樹 |
2015年 | J3 | 2位 | 4回戦敗退 | 相馬直樹 |
2016年 | J2 | 7位 | 1回戦敗退 | 相馬直樹 |
2017年 | J2 | 16位 | 2回戦敗退 | 相馬直樹 |
2018年 | J2 | 4位 | 3回戦敗退 | 相馬直樹 |
2019年 | J2 | 18位 | 2回戦敗退 | 相馬直樹 |
2020年 | J2 | 19位 | 不参加 | ランコ・ポポヴィッチ |
2021年 | J2 | 5位 | 2回戦敗退 | ランコ・ポポヴィッチ |
2022年 | J2 | 15位 | 2回戦敗退 | ランコ・ポポヴィッチ |
2023年 | J2 | 優勝 | 4回戦敗退 | 黒田剛 |
町田ゼルビア快進撃の要因
今シーズン、好調な原因は何でしょうか?ロングスロー、黒田監督の持ち込んだ戦術、新戦力など様々な要素が考えられますが、一つ一つの要素が複合的に絡み合って現在の素晴らしいパフォーマンスにつながっていると考えています。それではその様々な要素を深掘りしていきたいと思います。
守備戦術
FC町田ゼルビアの守備戦術はハイプレスを採用しており、相手のフォーメーションに応じて積極的なプレスを仕掛けます。基本フォーメーションは4-4-2で守備時には両SHを上げて4-2-4へと可変します。守備時に4-2-4の形になる理由は相手のビルドアップに対し、プレッシングをかけるためです。
狙いはボールホルダーに対し自由を奪いビルドアップを崩すこと。そしてこの戦術は、相手の後方からのビルドアップに対してプレスがはまらなかったときにミドルブロックを形成し、サイドにボールを誘導して奪う仕組みを作り出します。ハーフライン付近にトップが配置され、縦パスを消しながらサイドにボールを誘導・奪取することでショートカウンターに繋げることができます。
またこの形は攻撃時にも可変し、サイドを中心に攻撃を仕掛ける際にも利用されます。守備から攻撃へのスムーズな移行を可能にし、相手の守備を崩すための戦略的な配置となっています。このように可変4-2-4の形は守備時のプレッシングと攻撃時の展開の両方において、重要な役割を果たしているのです。
再現性
FC町田ゼルビアの再現性の高い試合内容として特に注目されたのは、鹿島アントラーズ戦です。この試合では町田ゼルビアが昨年J2で見せた強固な守備をJ1でも発揮し、狙いどおりの戦いでゴールを奪い、勝利をつかみました。昨季と同じスタイルを精度・強度ともに高く徹底し、再現性の高い試合内容で結果を出しています。
具体的な場面としては、ガンバ大阪戦が挙げられます。この試合では町田が全体のラインをコンパクトに保ちつつ、トランジションやスライド、寄せが速い守備を基本として展開しました。2トップが相手アンカーへのパスコースを消しながらDFラインにプレスを仕掛け、サイドへ誘導するか、ロングボールを蹴らせる戦術を採用。
このプレスの強度で常にプレッシャーを与え、攻撃の狙いも明確にしていました。長身FWオ・セフンを生かしたポストプレーから、FW藤尾翔太や両ウイングのバスケス・バイロン、平河悠によるサポートの連動性が証明され、高確率でセカンドボールを拾うなど、町田のシュート数が13(枠内9)、G大阪が2(枠内2)という数字で町田が優勢に試合を進めました。
このように、町田ゼルビアは昨季のスタイルをJ1でも再現し、高い基準でやるべきことを遂行し確実に勝利を掴んでいるのです。町田ゼルビアの組織論がチーム全体の一体感を生み出し、それぞれの選手が自分の役割を理解し、チームとしての狙いや優先順位を明確にしている点が再現性の高い試合を可能にしていると言えるでしょう。また、新加入選手も含めチームとしての緻密なコーチングにより、練度の高いチームが構築されていることも再現性のある試合運びに貢献しています。
明確な狙い
長身FWオ・セフンを生かしたポストプレーから、FW藤尾翔太や両ウイングのバスケス・バイロン、平河悠によるサポートの連動性を高め、セカンドボールを拾う確率を向上させました。また、セットプレーからの得点力も強化しています。このような攻撃の狙いの明確化とセットプレーの強化も要因の1つとして挙げられます。
FC町田ゼルビアの具体的な試合の場面として、第4節での北海道コンサドーレ札幌戦が挙げられます。この試合では、町田が2-1で勝利し、クラブ初のJ1で無敗を維持しました。特に注目されたのは、53分に藤尾翔太が先制点を決めたシーンです。ハーフライン付近でのインターセプトから素早く右サイドに展開し、仙頭啓矢からパスを受けた平河がポケットに侵入。滞空時間の長いクロスをファーサイドでオ・セフンが頭で折り返すと、藤尾が胸トラップからボレーシュートでネットを揺らしました。
このシーンは、町田ゼルビアの守備から速攻への移行の鋭さと、選手間の連携の良さを示しています。また、66分にはCKからイブラヒム・ドレシェヴィッチが追加点を決め、町田が試合を優位に進めました。このような具体的な場面は、町田ゼルビアの戦術と選手の相性やフィット感が高いレベルで機能していることを示していると考えます。
町田ゼルビアの戦術
ここまでのお話の通り「早く奪って速く攻める」スタイルが町田の戦術です。象徴的な場面は鹿島アントラーズ戦の先制点の場面。ボールホルダーである佐野選手のところでボールを奪い、素早く藤尾→平河と繋いでゴールを奪います。平河選手のトラップも見事でしたが、明らかに鹿島アントラーズのDFは平河選手の対応に遅れました。まさにうまくハメたといってもいい場面ではないでしょうか。
まずはサイドからプレスをかけてパスコースを佐野選手に限定させます。町田FW陣がバックパスを封鎖することで、佐野選手は後ろ向きでボールを受けてターンせざるを得なくなります。前を向いたところで中を切るようにプレス、佐野選手はやり直そうとしますが、その瞬間にサイドからプレスをかけていた選手が佐野選手に襲い掛かります。ここからすでに鹿島DFは後手にまわることになっていきます。
奪った瞬間に藤尾選手が少し落ちてボールを受けにいきますが、これによって釣り出される鹿島DF。その釣り出されたスペースを狙う町田の選手。そこに残1枚の鹿島DFが対応します。ゴール前にはポッカリと口を開けたスペースが出来上がり、そのスペースに後方から侵入してきた平河選手を鹿島DFは捕捉できていませんでした。完全に崩し切ったといってもいい場面だったと思います。
黒田監督について
黒田剛監督は、1970年5月26日生まれの北海道札幌市出身のサッカー指導者として活動しています。彼は長年にわたり青森山田高等学校で監督を務め、同校を全国屈指の強豪チームに育て、同時に多くの優秀なサッカー選手を育成しました。2023年シーズンからはJリーグ・FC町田ゼルビアの監督に就任し、同年のJ2リーグでチームを優勝に導きました。 監督としての特徴は、堅守をベースにした守備から攻撃へ素早く切り替える戦術を得意としており、ロングスローも多用することで知られています。
黒田監督はどうチームを変えたのか
黒田監督はFC町田ゼルビアにおいて短期間で大きな変化をもたらしました。彼はチームの守備力を大幅に向上させ、前シーズンから大きく改善しリーグ最小失点を記録しました。また、チームの「悪い習慣」を徹底的に分析し原理原則に基づいた基本的なプレーをチームに浸透させることで、組織再生を達成したとされています。
またプロ選手たちにも高校サッカーでの経験を活かし、基本に忠実なプレーの重要性を再認識させました。この指導法により選手たちは「原理原則に立ち返り、実践し続けることで負けないチームになる」という共通認識を持つようになりチームは連勝を重ね、J1リーグでの単独首位に躍り出ました
さらに、黒田監督はチームモデルの構築においても日々の努力と継続を重視し、それを「習慣」としてチームに定着させることで最強のチームを作り上げることを目指しています。
まとめ
ここまでFC町田ゼルビアの好調な理由を探ってきましたがいかがだったでしょうか。色々な要因を語ってきましたが、一言でまとまると「普通に強い」チームであると言えます。すでにJ1リーグの強豪たちを撃破しており、その勢いは止まることを知りません。
とはいえ、代表活動の中断もありましたので各チームとも分析は進んでいると思います。このまま逃げ切れるわけでもないでしょう。ですが、黒田監督がもしも「ver2.0」を隠し持っていたとした場合や「夏場」を凌ぐことができた場合、笑顔で年越しを迎えることになるかもしれません。今後の町田ゼルビアの戦いには、より注目していきたいですね。
では、また。