堅守速攻、可変システム、偽FWなど、時代の流れと共に様々な新システムや戦術が生み出され、その戦い方も少しずつ変化してきました。

そしてそんな戦術の変化の中で近年重要視されているポジションが、今日ご紹介する「アンカー」と言われるポジションです。ひと昔前は、ダブルボランチを取り入れたフォーメーションがスタンダードでしたが、最近はアンカーを配置するチームも増え、その重要性はますます高まっています。

今日この記事では、アンカーとは何か、アンカーの役割やそのポジションにおいて必要なものは何か、などを徹底的に解説していきます。アンカーというポジションについての理解を深め、よりサッカーを楽しんでいきましょう!

アンカーとは何か?

アンカーとは、サッカーのポジションのことで、守備的ミッドフィルダーのことを指します。DMF(ディフェンシブミッドフィルダー)と表記されることが多いですね。

センターバックとボランチ(CMF)の間に位置し、ボランチより守備的な役割を担っています。センターバックの前に1人で位置していることが多いです。
英語では「碇:いかり」という意味で、碇のようにチームの底部分にポジションを取り、中盤の底を固めるといったイメージで使われるようになったそうです。

ポジションはどこ?

文章で説明してもイメージ湧かない方もいると思うので、画像を使って分かりやすく説明していきます。

黄色の6番がアンカーで、画像はアンカーを配置しているチームがよく使っているフォーメーションです。大体は4-1-2-3(4-3-3)、4-1-4-1といったフォーメーションでアンカーが配置されることが多く、画像のようにセンターバック(3番と4番)の1つ前、ボランチ(8番と9番)の1つ下に位置しています。

アンカーとボランチの違いは?

では、アンカーとボランチでは一体何が違うのでしょうか?画像を見て違いが分かった方もいるかもしれませんが、この2つは違いが分かりにくいポジションでもあります。また、明確に違いが定められている訳でもないので、感覚的な話になってきますが分かりやすく解説していきますね。

そもそもボランチとは?

ではまず、そもそもボランチとは何なのか?ボランチとは、アンカーに比べ攻撃的なミッドフィルダーとイメージしてもらえると分かりやすいかもしれません。先ほどの画像で言えば、8番と9番の位置がボランチになってきますね。

アンカーとボランチの違い

同じミッドフィルダーでも、攻撃的ミッドフィルダーなのか、守備的ミッドフィルダーなのかの違いだと思います。アンカーを配置しないチームはボランチが2つの役割(攻撃と守備)を担う場合もありますし、アンカーを配置すれば、その役割を分ける形になるといったイメージですかね。

4-4-2のようなフォーメーションの中盤2枚はボランチと言われますし、4-1-2-3のように中盤を1-2のように分けている場合は、アンカーとボランチという風に言い方を分けています。

アンカーは必要なのか?

私の個人的な意見になりますが、結論から言うと私はアンカーは必要だと思っています。

様々なサッカースタイルや戦術がある中で、近年は「堅守速攻」のサッカースタイルが主流となりつつあります。プレミアリーグの強豪マンチェスターシティやリヴァプール、ブンデスリーガの王者バイエルンミュンヘン、銀河系軍団レアルマドリードなど、強豪と言われるクラブの多くでアンカーを配置したフォーメーションが使用されています。

アンカーを配置することで、より強固なブロックを形成し、一番得点に繋がりやすいバイタルエリアへの侵入を食い止める事が出来ます。また、アンカーは守備面での貢献が注目されがちですが、ビルドアップやカウンターの起点にしやすい点も魅力です。最終ラインに落ちてビルドアップに参加したり、相手の中盤を潰すことが出来ればすぐさまカウンターに繋げることも出来ます。

また、中盤での攻守の役割が明確になる点、最近流行りの偽SBや可変システムにも柔軟に対応できる点もアンカーを配置するメリットとして挙げられます。

このような理由から私はアンカーの存在は、現代サッカーを勝ち抜くために必要不可欠なポジションだと思っています。

アンカーの役割

では、続いてアンカーの具体的な役割について解説していきます。

より高い位置での攻撃阻止

最終ライン又はより自陣の深い位置で攻撃を阻止するのと、相手のゴール前で攻撃を阻止できるのでは、失点のリスクや得点の可能性が大きく変わってきます。これは極論でしたが、どのチームもより高い位置(相手ゴールに近い位置)でボールを奪いたいと考えます。アンカーの配置はそんな高い位置での攻撃阻止において、重要な役割を果たすことが出来るポジションです。

アンカーがいることで、比較的安心感を持って味方は前線からプレスに行けますし、攻め込まれた状況であってもアンカーがいれば最終ラインより前でボールを奪えるかもしれません。そういった部分で重要な役割を担っているポジションと言えるでしょう。

ビルドアップの起点、攻撃の繋ぎ目

守備面だけでなく、攻撃面特にビルドアップ時にも大きな役割を果たします。相手の前線からのプレス回避、アンカーとセンターバックで3バックを形成することで、サイドバックをより高い位置に押し上げる、攻撃が行き詰まった時の逃げ道など、ビルドアップや攻撃のスイッチが入る時にはアンカーが中心となって試合を組み立てます。

マンチェスターシティが採用している偽SBという戦術を見ると分かりやすいかもしれませんが、この戦術を行うチームにはアンカーは必須だと言えます。

バランス調整

チーム全体のバランス調整を行う役割もあると思います。チームが前のめりになっている時や逆に引きすぎている時など、どちらか一方にバランスが偏っている状況においては、このアンカーの働き次第でバランス調整を行うことが出来ます。前のめりになっているのであれば、アンカーは最終ラインと前線との距離をよりコンパクトにするポジション取り、引きすぎてハマっているのであれば、一つ前にポジションを上げて攻撃的にすることも可能です。

もちろん、試合状況によってはそうしない方がいいこともあると思うので、全ての状況に当てはまる訳ではないと思いますが、チームのバランスが崩れ流れが悪い時にはその流れを止める力を持っているポジションだと思います。

アンカーに必要な能力

次にアンカーというポジションにおいて必要な能力は一体何なのか?を説明していきます。

ボール奪取力

守備的ミッドフィルダーですので、もちろんこのボール奪取力が必要になってきます。1対1の強さはもちろん、攻守の交代が激しい中盤での球際争い、インターセプトなどボール奪取力に優れた選手はアンカーに向いていると言えます。私の経験上にはなりますが、センターバックやサイドバックをやっていた選手がアンカーで活躍できると言うケースは非常に多く、それはDFというボール奪取力が必須となるポジションでの経験があるからではないでしょうか。

広い視野と状況判断力

これは特に攻撃面での話になります。ビルドアップ時の起点となりやすいということは先ほどもお伝えしましたが、ビルドアップの中心として試合を組み立てていく以上、広い視野で判断が速い選手でないと簡単にボールを失うことになってしまいます。

しかもアンカーがボールを失えば、失点に直結する可能性はかなり高いので常に視野を広く確保し、周囲の状況を把握しておく必要があります。そしてボール保持中はそのまま運ぶべきなのか、素早く味方を使うべきなのかの判断が速く出来ないようでは命取りです。常に試合状況を客観的に把握できる能力を身に着けることが大切です。

プレーの正確さ

アンカーというポジションでのミスは、時に試合を決定づけるミスとなってしまうこともあり得ます。また、アンカーでの活躍ぶりがチームの勝利へと繋がることもあります。それだけ重要なポジションであり、与える影響も大きいということです。ですので、そういった面でプレーの正確さは大切になってきます。パスやトラップ、ドリブルといったサッカーの基本であるプレーの正確な選手が向いているポジションですね。そしてその成功率もほぼ100%ぐらいが理想的です。

どんな状況であっても、焦らず冷静に正確なプレーが出来るメンタルコントロールも必要かもしれません。

アンカーの選手ランキング

では、実際にアンカーとして世界で活躍する選手を3人厳選して紹介します。

遠藤航

遠藤航選手公式X(旧Twitter)より引用
生年月日1993年2月9日
国籍日本
身長/体重178cm/77kg
所属チームリバプールFC
遠藤選手のプロフィール

プレミアリーグの強豪リバプールでアンカーを務める日本の主将。名将クロップにも認められ、別名「デュエル王」とも言われる。

※デュエルとは…1対1の場面においてのボール奪取の強さのこと

ロドリ(ロドリゴ)

Pinterestより引用
生年月日1996年6月22日
国籍スペイン
身長/体重190cm/78kg
所属チームマンチェスターシティ
ロドリ選手のプロフィール

世界No.1クラブとの呼び声高いマンチェスターシティで、アンカーを務めるスペインの主将。「彼が出場した試合は負けない」とも言われ、世界No.1アンカーを争う逸材。

デクラン・ライス

Pinterestより引用
生年月日1999年1月14日
国籍イングランド
身長/体重188cm/80kg
所属チームアーセナル
ライス選手のプロフィール

名門アーセナルでアンカーを務め、驚異のボール奪取力やプレーの正確さから、前述のロドリと共に世界No.1アンカーを争う存在。

まとめ

さて、今日は現代サッカーで重要視されている「アンカー」というポジションについて解説してきました。様々な戦術やシステムが生まれる中で、アンカーは非常に大きな役割を担っています。世界の強豪クラブもアンカーを配置しているチームは多く、今後もそういったチームは増えていくことと思われます。

今日紹介したポジションに限らず、それぞれのポジションについての理解を深めることが出来れば、サッカーがより楽しくなるはずです。もっとサッカーを知り、もっとサッカーを楽しんでいきましょう。

では、また。

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