皆さんはサッカーやフットサルで体に疲れが溜まった時、どんな対応をしていますか?

疲労は、パフォーマンスと密接な関係があり、正しい知識で正しい方法を実践すればより早く効果的に疲労を回復することができます。

そこで今日はプロサッカー選手やプロサッカークラブのトレーナーとしてトレーニング指導や治療を行うプロのトレーナーが「サッカーやフットサルで溜まった疲労回復法」について徹底的に解説していきます。

サッカーでたまる疲労にはどんな種類があるのか

疲労にもいくつか分類があり、大きくは「疲労」と「疲労感」の違いがあります。

「疲労」心身への過負荷により生じた身体能力の低下を言います。運動後に筋肉に力が入らない状態の事を指していると考えるとイメージしやすいと思いますが、エネルギーの枯渇や神経系の過労、筋肉の疲弊など、体内での生理学的な変化に起因して疲労は起こります。

「疲労感」疲労が存在することを自覚する感覚と言われています。それは主観的であり、同じ活動に対して疲労感の程度は人それぞれに異なります。疲労感は疲労と違い物理的な変化とは直接関係がなく、個人の感覚や体験によって左右される要素が大きいのです。

疲労とパフォーマンスにはどんな関係性があるのか?

疲労は体内の生理学的な変化によるもので、疲労感は主観的な感覚です。サッカーなどのスポーツでは、両方の要素が結びついてパフォーマンスに悪影響を与えることがあります。

具体的には、反応速度や運動能力の低下、ケガのリスクが高まるなどの影響が考えられます。

疲労はパフォーマンスを低下させる?

運動をすると体には多くの刺激が入り、身体機能の適応を促します。筋肉はより強い力を発揮できるようになり、神経は敏感に反応し体の反応を素早くしてくれるようになります。この反応を適応と言います。

この「適応」は次に同じ状況になった時に備えて人の身体に備わっている生理反応なので、程度の違いはありますが、度老若男女問わず誰にでも起こっている反応です。ですが、運動が終わった後はそんな素敵な変化よりも「疲労」による運動への悪影響が速く出てしまうのです。

そのため疲労によってパフォーマンスの低下は一時的には発生しますが、疲労した状態から抜け出すと身体のポジティブな変化を実感することができるので疲労回復のために有効なアクションを早期に起こすと良いでしょう。

サッカーやフットサルで溜まった疲労の回復方法をプレー前、プレー後に分けて紹介

サッカーやフットサルの後に感じる疲れの対処法を解説します。紹介する内容を全て行わなければ効果が無いわけではありません。部分的に取り組むことでも疲労回復効果が見込めますので、是非取り組んでみてください。

疲労軽減の為にプレー前にやるべきこと

まずは、疲れた状態で運動をしないように日常生活のリズムを整える事が一番大切です。しかし、なかなか思い通りに時間を作れない方も多いと思いますので、運動直前からでも出来る工夫を紹介していきます。

・運動前の栄養摂取(サプリやプロテイン、軽食)

運動に必要なエネルギーを事前に補給することは、運動の疲労を軽減する上でとても重要です。運動に必要なエネルギーは食事によって体内に取り込まれた食品を消化・吸収する事で得られる糖質や脂質を利用して作り出します。

エネルギーの材料が不足すると、筋肉の発揮できる力が下がり、足がつるなどの傷害が発生しやすくなるのです。エネルギー不足を防ぐためには運動開始の2時間前を目安に、炭水化物や食べやすい果物を摂ると良いでしょう。

空腹な状態で運動をする事は体にダメージを蓄積してしまうので、食事を摂ることが難しい場合には、市販のサプリメントやゼリー系の飲料などを購入し補食とすることも有効な手段です。近年は疲労回復を目的に運動前に飲むアミノ酸やクエン酸が配合されているプロテインやサプリメントがコンビニでも販売されているので、興味がある方はそちらも試してみてください。

・ウォーミングアップで運動への準備を

運動開始前に必ず行うべきなのはウォーミングアップです。 ウォーミングアップの目的は大きく分けて2つあり、関節の可動域を広げること筋肉を収縮しやすい状態に温めることです。ウォームアップの方法は多様で正解はありませんが、この2つの目的を外さなければ問題ありません。

具体的な方法としては、ジョギングを5~10分程度行い体を温め、ストレッチを繰り返して関節の可動域を広げます。その後、ボールキックやステップワークなどの、サッカーで行う動きを確認して終了となります。あくまで準備運動ですので、ウォームアップでは疲れを感じない程度にとどめる様に注意しましょう。

・ジャンプやダッシュなどを行い強いパワーを出しておく

疲れない程度にとどめるべきウォーミングアップですが、強いパワーを必要とするダッシュやジャンプは少ない回数で良いので、必ず加えるようにしてください。

筋肉の出力を上げておくことも重要な目的ですが、強いパワーを発揮するジャンプやダッシュは自分のイメージしている動きと実際の動きに乖離が生まれやすい動作です。特に久しぶりに激しい運動を行う方は何もない地面で転んでしまう事もあります。運動会で張り切って走り転倒してしまう父兄をイメージするとわかりやすいと思います。

試合開始までに「強く」「速く」動作を試して、イメージと現実の差をできるだけ少なくすることが、過度なエネルギーの消耗を抑えることに繋がりますし、怪我の予防にもなります。

・自分に合ったスパイクやインソールなどのツールの選定

身体の準備だけでなく、自分に合ったツールを用意する事も重要な準備です。特に慣れないシューズで運動すると、足部が固くなり翌日の疲れに大きな影響を及ぼします。

新しいスパイクを購入した時は、短時間の試し履きを行い、スパイクを足の形に慣らす作業を事前に行うと良いでしょう。靴を伸ばすことで靴擦れや足部の疲れを和らげることが出来ます。試合で始めて履くときには使い慣れたスパイクとセットで使用する事をお勧めします。

最近は足部の機能を高めることを目的としたインソールも種類が多く出回っています。疲れやすいと感じているプレーヤーにとっては、インソールを変えることは疲労を蓄積しないために有効な対策の一つと言えます。

疲労軽減の為にプレー中にやるべきこと

プレーが始まってから疲労軽減のためできることは多くはありませんが、疲労を軽減するために最も重要なポイントをお伝えします。

・プレー中は水分補給が重要

プレー中はこまめに水分補給をしてください。プロ選手の場合では1試合で体重は2~3㎏程度減少する事があります。減少している体重はほぼすべてが水分の排出によるものです。短時間で大量の水分が汗として排出され、多くの場合脱水症状を引き起こします。

一般愛好家の方はプロ選手程の体重減少は起きないと思いますが、体重の3%を超える水分の減少が起きると脱水症状が始まると言われますが、実際3%以下でも少しずつ症状は出現し始めています。脱水症状が起きると貧血のようなめまいや吐き気などが出始めるので、身体は疲労回復を後回しにして症状への対処のためにエネルギーを消費します。

結果的に、疲労が強く、長く残ってしまう状況が出来上がってしまうので、体重減少を防ぐためにこまめに水分補給をしてください。特に夏場の脱水症状は熱中症と重なり命に係わることも考えられるので、確実な水分摂取を推奨します。

より早い疲労回復の為にプレー後にすべきこと

プレーが終わった後は速やかに疲労回復のために必要な行動を始めましょう。運動のために体に入ったスイッチをオフにして、回復のためにエネルギーを使う状態に戻していく事が大切です。

・プレー後にクールダウン(整理運動)はした方が良いのか?

プレー後にクールダウンとして軽運動はした方が良いですが、内容を吟味する必要があります。

運動後はクールダウンとしてジョギング等の軽運動20分程度行う事が一般的ですが、基本的にジョギングを行うと疲労回復が促進される研究報告は見られません。ですが、経験的に軽く走ったほうが身体は楽になったと感じる方が多いのも事実です。

身体は運動強度の高いスポーツを行うと交感神経を優位に働かせて、いつでも動けるように身体を興奮させて事態の変化に備えます。車で例えるならエンジンを動かしアイドリングしている状態です。交感神経優位なこの状態では疲労回復は後回しになってしまうので、交感神経と逆の働きをする、副交感神経が優位になる行動をとることが疲労回復を早めるためには必要になります。

クールダウンでジョギングをすることが多い人にとっては、ジョギングが副交感神経を優位にするスイッチの役割を果たす場合があります。経験的にジョギングをした方が良いと感じる方は副交感神経を優位にするスイッチとしてジョギングがセットされている状態といえるので、ジョギングを行っても良いでしょう。そのような経験がない方は筋肉の緊張緩和を図れるストレッチをしながら、ゆっくりと呼吸を繰り返し副交感神経を優位な状態にするだけでもクールダウンとしては十分です。

・失った水分と栄養を速やかに戻す

前述した通り、運動直後の体重減少のほとんどは水分です。プレー終了後は水分をとり体重をできるだけ運動前の-1㎏程度まで戻すようにしましょう。

水だけをがぶ飲みするのはではなく、エネルギーになる炭水化物と体の修復の材料となるタンパク質を一緒に摂取してください。

運動後に固形物を食べることが難しい方もいると思います、食事をとることが難しい場合はサプリメントやプロテインで代用すると良いでしょう。運動後のリカバリー目的で開発されたドリンクなども販売されていますので、興味がある方は調べてみてください。

疲労による影響から早く抜け出すために、翌日にするべきこと

サッカーをした翌日に下半身の筋肉痛と張り感を感じて起床する。サッカー経験者ならあるあるの出来事だと思います。睡眠によって固まった身体をいかに動かし回復するか、疲労回復のために一番努力を要する時間が始まります。

・疲労のピークは24時間~48時間後

高強度の運動で発生する疲労、そのピークは運動直後から24時間~48時間後にピークを迎えます。わかりやすい例では筋肉痛です。運動直後より翌日の方が痛みや固さを強く感じる経験をしたことがある方は多いと思います。

筋肉痛のように筋肉が疲労や微細な損傷を起こしている状態を抜け出すためには、筋肉を動かして血流を良くすることが効果的です。回復目的で行う軽い運動をアクティブリカバリーと言い、ジョギングやストレッチ、水泳などの軽い運動を行い、血流の増加を促す作業を指します。筋肉や関節の動きが固まってしまうと動作に痛みが伴う場合が多いので、ストレッチを行い筋肉の柔らかさを戻す事は重要です。

自分で運動をして行うアクティブリカバリーと違い、マッサージや入浴など外的な要素で回復を促進する行動をパッシブリカバリーと言います。

固さを感じる筋肉や関節をマッサージでほぐしたり、動きを固く感じる部位にマッサージガンやフォームローラーを使って動きやすくしていく事もパッシブリカバリーの一環です。

アクティブリカバリーとパッシブリカバリーを併用して行うと疲労からの回復は早くなるでしょう。

・冷水と温水の交代浴もおすすめ

冷水と温水に交互に入ることを交代浴と言います。血流の増加や自律神経の働きを整える目的で多くのアスリートがリカバリーに取り入れています。

水温の設定には諸説ありますが、42℃前後のお湯と15℃以下の冷水を温水3分、冷水1分の時間割りで交互に4~5セット行うと良いでしょう。自宅だと冷水の用意が難しい場合が考えられますが、代わりにシャワーを使って体を冷やす事でもある程度の効果が見込めますので、試してみてください。

・良質な睡眠とバランスのいい食事を意識する

人の体は食事で採った栄養素を材料に、眠っている間に体の修復を進めます。そのため食事と睡眠の質は疲労回復速度に影響を及ぼします。

睡眠については、寝る時間の確保が重要です。プロのアスリートであれば一日9時間程度は睡眠に当てる事を推奨されています。一度に9時間も寝られない人もいるので、昼寝を活用して合計の睡眠時間を伸ばす工夫が必要になります。また睡眠の質をあげるために、就寝の1時間前は目に強い光を当てないようにすると良いでしょう。

睡眠前の行動は睡眠の質を大きく左右します。プロサッカー選手で睡眠1時間前から携帯やテレビの無い部屋で、ストレッチをしてから寝るルーティーンを毎日行っている選手もいるほどですので、疲れを感じている場合は寝る前の時間をリラックスタイムに当てて、睡眠の質を高めるように努めましょう。

食事はどんなものを中心に食べるのがいいか

食事は炭水化物とたんぱく質を中心に食べるのが効果的です。炭水化物とたんぱく質を同時に食べるとたんぱく質の吸収効率が上がります。しかし、たんぱく質の代表である肉類は脂肪分も多く含まれている事が多いので、調理方法を工夫して高たんぱく、低脂質な食事になるように注意しましょう。

まとめ

さて、今日は疲労回復の為にやるべき行動を簡単に解説しましたリカバリーは本格的に取り組めば、効果を実感しやすいのですが、意識するポイントや要素が多いためすべてを網羅しようとすると大変な労力を必要とします。自分の生活の中で上手く取り入れられる範囲を見極めて実践できれば、それだけでも疲労回復の効果は期待できるので、今日の記事を参考にぜひ試してみてくださいね。

では、また。

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